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太陽のような人

(主要人物:取手 ジャンル:ほのぼの キーワード: - 作品No.27)

最終更新:2005/05/31(Tue) 21:22
寄稿者:西屋

 僕が彼に救われたのは、彼が転入してきた次の日。
 滑らかな旋律のように、彼は僕の大切なものを取り戻してくれた。


「そこで味噌を入れ――」
「味噌!?俺は醤油派。味噌入れるより醤油の方がいい!」
「味噌も食ってみれば気に入るだろうけどな。そのうち作ってやるよ」
「やった!楽しみだな~」
 横のベッドにいた皆守君とはっちゃんが、カレーに入れる隠し味について話してる。
 嬉しそうに笑うはっちゃんを見てると、何故か僕も嬉しくなるんだ。

「お前達、ここは保健室なんだ。そんなに騒いでいては取手に迷惑だろう?」
「あ……。かまちーごめんな」
「え…僕は別に……」
 ルイ先生に注意されたはっちゃんが謝ってくれる。
 僕は気にしてなかったんだけど…。
 むしろ話を横で聞いてて楽しかった。

「九ちゃん、もうすぐ午後の授業が始まるぞ」
「あ、ホントだ。甲ちゃんも午後からは出るよな?」
「ちっ、わかった。早く戻るぞ。取手、うるさくして悪かったな」
 はっちゃんに訊かれて、皆守君は彼よりも先にドアを開けて外へ出た。
 その際に彼も謝ってくれる。
 良い人なんだ、はっちゃんも皆守君も。

「あの、はっちゃん……」
 保健室を出て行こうとする彼の名を呼ぶと、はっちゃんは足を止めて僕の方を振り返った。
「何?かまちー」
 笑顔を向けられて、僕はどきりとする。
 僕は彼の力になりたい。
 はっちゃんのお陰で、僕は前へ進む事が出来たから。

「あの……」

 探索へ連れて行ってって言うだけなのに。
 そうすれば彼は連れて行ってくれる。
 でも邪魔になるんじゃないかって思うと、連れて行ってなんて言えない。

「かまちー?」
「ご、ごめん」
 慌てて謝ると、はっちゃんは少し困ったような顔をした。
 でもすぐに笑顔に戻って、もう一度僕の名前を呼んだ。
「かまちー、今日暇だったらさ、手伝ってもらっていい?」
「え……」

 ついて行きたいって思ってたのに、突然誘われると返事がすぐに出来なかった。
 こんなところが僕の悪いところだって気が付いているんだけど、なかなか直らない。
「あ、他に用がなければだけど……忙しかったかな」
 そう言いだすはっちゃんには、すぐに首を振って否定できた。
「う、ううん。手伝っても…いいかな…」
 ようやく言いたかった事が言えた。
 本当に僕は情けないと思う。
「うん、手伝って。かまちーがいてくれると心強い。じゃあ待ってるから、後でね」
 笑顔で軽く手を振りながら保健室を出て行く彼を見送った。
 
 はっちゃんが心強いって言ってくれた。
 そう思うと、心がぽかぽかする。
 僕ははっちゃんが太陽みたいな人だと思うんだ。
 一緒にいると、あったかい。
 だから僕は、そんなはっちゃんが大好きなんだ――。

  

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