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ありえない友人

(主要人物:葉佩 皆守 ジャンル:ギャグ? キーワード: - 作品No.30)

最終更新:2005/06/13(Mon) 01:19
寄稿者:西屋

 エジプトで《レリック・ドーン》とかいう奴らの襲撃を受けて、何とかサラーさん連れて逃れたけど途中で倒れちゃって……。
 それから、協会に助けられたその足で日本の天香学園に転入させられた。
 仕事だから仕方ないけど、一仕事終えたらちょっとぐらい休みをくれてもいいのにさ。
 普通、倒れてた人間をそのまま次の仕事場所に送る?
 まぁ、普通の仕事じゃないから文句も言えないんけど。

 天香学園に来て、屋上にいたクラスメイト、皆守甲太郎には「生徒会には気をつけろ」みたいなこと言われるし、地下遺跡探索初日にしてクラスメイトの八千穂明日香に仕事のことバレちゃうしで今回の仕事は大変。
 八千穂は誰にも言わないよって言ってくれたはずなのに、次の日には皆守まで仕事のこと知ってるし。
 あれには本当に参った。
 しかも二人とも探索についてくるし……。
 二回目の仕事なのに、こんな感じでいいのかなぁ……。
 う~ん、あんまり良くない気がする。

 ピリリリリッ
 急にH・A・N・Tがメールの着信を告げる。
 結構驚くんだよね、メールの着信って。探索の時とか特に。
 誰だろう……?
 メールを開くと、相手は珍しく皆守だった。
 内容は……。
「皆守め、毎晩仕事で大変な俺をパシらせる気か」
 カレーパンが食べたいって……保健室でサボってる奴が言う?
 大体そっちの方が売店に近いのに。
 でも大切な物くれるって言うし、まぁ今日のところはいいか。丁度売店にパン買いに行くとこだったし。
 ついでだ、ついで。

 カレーパンを持って保健室へ行くと、案の定サボりの皆守がベッドを占領していた。
 俺が来たことに気付くと、声を掛けてくる。
「よぉ、メール読んでくれたか?」
 まずカレーパンな皆守に、カレーパンを投げてよこす。
 嬉しそうにそれを受け取る皆守。

 何か腹立つなぁ。
 そもそもカレー好きなら、カレーパンなんてまわりくどい事しないでカレーを頼めよ。
 売店で売ってないから、頼まれても持って行けないけどな。
 何にせよ、こんなやつの頼みをきいた俺も俺か。
 友人のワガママを律儀にきいてやる健気な俺。
 とりあえず自分で褒めとく?
 偉い、エライ……。
 うわ、何か寂しい奴だ、俺って。

「それで、皆守の大切な物俺にくれるっていうのは?」
 これは気になる。
 あの超やる気がなくて、いつも寝てばっかりの皆守が大切にしている物。
 案外光り物とか?いや、もしかしてアロマ?
 でもアロマセットとかは別にいらないな。
 だって使わないし。使わない俺が貰ったらもったいない。
 ホント、何くれるんだろう。
「ん?あぁ、ほらコレだ」

 皆守がどこからともなく出してきた物は……カレー鍋。
 あのカレーを作るための鍋。
 ぐつぐつ煮込むための鍋。
 どう見てもみても鍋。

「……ありえない」
「何だよ、俺の大切な物がカレー鍋で悪いか?」
 それはまあいい。
 いや、結構問題なのかもしれないが、この際そのことは目をつぶるとしよう。
 そりゃもっと役に立つ物が欲しかったって思ったけど。
 それにしても、やっぱりありえない。
 だってさぁ、だってさぁ……俺の目の前にあるよ?カレー鍋。
「普通……学校にカレー鍋持って来る?ありえない」
「そうか?」
 そうか?って、言われるまで何とも思ってなかった……?
 それこそありえないって。

 ……もしかしてこの学園では常識でモノを考える事が間違ってるのか?
 って、そんな学園あっていいのか?
 でも、取手は生徒なのに特別講師やってるし。
 そういやあの時間、取手のクラスでの授業ってどうしてるんだろう……。
 いや、それは考えちゃいけない気がする。
 黒塚なんて廊下に石置いて、人が拾うのを待ってるし。あれはストーントラップだよな。
 七瀬は重そうな本をいつも抱えてる。あんまり見てないのに、あんなに何冊も持ってる意味あるのかなぁ。
 椎名、あれはあからさまに改造制服だよな。可愛い顔して爆弾作るのかなり上手いし。
 八千穂は地下遺跡の化人をテニスラケットとボールでやっつけるし……。
 ヤバイ、もしかして常識っぽい人いない?
 もう考えるの、やめとこ……。
 
「もういい。有難く頂くから寮の俺の部屋まで持ってこい」
「……俺に持って来させる気がよ」
 そんなの当たり前だ。
 どうやって持ってきたのかは知らないけど、せめて寮までは持って帰れ、カレー鍋。
 不満そうにアロマパイプを咥えたって、俺は持って帰らないぞ。
 カレー鍋抱えて下校なんて、摩訶不思議すぎる。
 っていうか皆守、絶対学校の七不思議に加えられてるよ。
 カレー鍋を抱えて歩き回る男子生徒、ってな。

 何か頭が痛くなってきた。もうどうでもいいや。
 早く教室帰ろ……。
「皆守の大切なカレー鍋、ちゃんと届けるように。途中で昼寝なんてするなよ」
 昼寝禁止ッ!
 皆守はどこでも寝るから要注意だ。
「……っち、仕方ねぇな」
 仕方なくないし、当たり前だろ。
 無理矢理皆守の承諾を得て、保健室を出る。
 何かかなり疲れた。頭痛いし。
 しまった、ついでに頭痛薬貰えばよかった。

 そういえばあの日、転校初日、寮まで案内してくれた皆守は帰り道の途中で寝た。
 案内してた人を待たせて寝る?
 ありえない奴だ。
 もう少しで寮に着くのに、わざわざ途中で寝るし。
 転入初日にしていじめにあったかと思ったんだぞ。
 転入初日の転校生ってのは、いろいろと気にするんだからな。
 っていうかさ、睡眠障害なのか?それともラベンダーのせい?
 とりあえずやめとけよ、ラベンダー。
 ラベンダー好きなら無理にとは言わないけどさ。中毒になっても知らないぞ。
 それにさ、頼むからああいう案内だけはやめてくれ……。どういう反応返していいのか解らなくなるから。
 だからあの時、思わず蹴り起こしちゃったし。
 悪いとは思ったけど、元はと言えば皆守があんな所で急に寝たのが悪いんだぞ。

 あ~ぁ、俺が生まれた国とはいえ、日本って不思議な国だよなぁ。
 今回の仕事は予想以上に大変そうだな。人間関係が。
 頑張るしかないけど……。

「あッ!俺のパン買うの忘れた……」
 教室前で気付くあたり、かなり滅入る。
 ……とにかく頑張れ、俺!負けるな俺ッ!
 まずはもう一度売店にダッシュだぁッ!(泣)

  

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