タダシイでぇとの遊び方

ダーム

「おっ、マリィ。あれ乗ろーぜっ」
「マッテよ、龍麻オニイチャンッ」
晴れた日曜日、龍麻とマリィは二人で遊園地に遊びに来ていた。今回のデートは遊園地好きのマリィと遊園地に実は一度も来たことがなかったという龍麻の見解が『遊園地に行こう』ということに一致したため起こったものである。楽しそうに歩いている二人だが、その後をつけてきている人影がいることに気付いてはいなかった。
「・・・どうせ物壊すんだろうなぁ・・・ひーちゃん・・・・」
「京一ッ、見つかっちゃうじゃないかっ。ほらこっちだよ。醍醐君もぼーっとしない。」
「あ、ああ・・・・・」
「ふふふっ。マリィたら楽しそうでよかったわ♪」
尾行している人影・・・そう、いつもの面々である。あの二人が遊園地に行くというので一人は龍麻が物壊さないかどうか心配で、一人は好奇心で、一人は付き合いで、そして最後の一人はただ単におもしろそうだからこっそりとついてきたのだ。ちなみにこの理由は発言順である。そして・・この尾行者達はまだ己の運命を知らない・・。

 事件が起こったのは『バイキング』に乗ったときだった。海賊船の形をした乗り物が上下に揺れる、アレである。ここの遊園地の物は他のと比べて特に大きかった。
「へー、でっけー。っとマリィ、怖いんだったらやめるよ?」
「ウウン。マリィ怖くないヨ。マリィは絶叫マシーンとか好きだモンっ」
「そうか。んじゃいってみよっか」
二人は元気よく入口に入っていく。そしてそれを見送る四人。
「さ、桜井、俺はここに残る・・・」
「ええ?何で?醍醐君。」
「どのみちひーちゃん達一番後ろの席に座ったから尾行は無理だぜ。入ったらバレる」
「フフフ。あんなにはしゃいじゃって☆」
というわけで結局乗り込まなかった。そしてバイキングは動き出す。
「ワーイッ」
「うわっ、揺れる~」
龍麻は思わず前にある手すりを思いっきり掴んだ。
-----バキィ--------
見事な音がして目前の手すりが見事にはずれる。
「オ、オニイチャン?」
「う~む。古かったのかなぁ・・・・?」
上下に振られながら龍麻は手にある手すりだった金属の暴を見つめ呟く。そして一番振りが高くなったとき、
「すてちゃえっ」
----ぽいっ----
手すりを外に投げ捨てた。
「イイの?オニイチャン・・・」
さすがにマリィのツッコミが入るが、龍麻は全く気にせずに上下に揺られる感覚を楽しんでいる。
「いいって。車の窓からゴミ捨てるようなもんさ」
「フーン。ソウなんダ。」
マリィも納得してくれたようだ。二人はゴミのことは気にしないで、気持ちよく揺られる感覚を楽しんだ。
一方、その『ゴミ』といえば・・・・
「わーーーーーっ、醍醐くんっ!」
醍醐は見事にゴミの直球を頭に受けた。
「大丈夫か、醍醐っ?!」
ズシーンと大きな音を立てて血に沈んだままの友人を必死に呼ぶ京一。
「・・・・・・」
返事がない。ただの屍のようだ。
「あら、醍醐くんったら頭から滝みたいに血を出してしまって」
美里がのんびりと状況を把握する。
その間にマリィと龍麻が出口から出てきた。
「京一君、小蒔、私が治療しておくから先に行っていて」
「お、おう」
「葵、よろしくね」
歯切れが悪いセリフを残して走っていく二人を葵が見送る。そして醍醐の傍によるといつの間に出したのか手に持っていたバンソコウを醍醐の頭に乗せる。
「今いそがしいの。治療は後でね、醍醐君」
そう言い残して美里が去っていく。
「・・・・」
後には血塗れの屍が残されていた。

外野で起こったドラマなどお構いなしで次に二人が来たのはミラーハウスだった。
「へー、これがミラーハウスかぁ~」
龍麻はしきりに見るもの全てに感心している。それを見て少し大人びた笑いをするマリィ。
「もう、オニイチャンッてば。」
どこか優しい笑顔を見て龍麻が照れる。
「ご、ごめんマリィ。じゃ、はいろうか」
仲良く入っていくのを見送って茂みから3人が出てきた。
「これは、バレないかな?」
「まぁ、ばったり鉢合わせしなけりゃいいんじゃねえの?」
「ふふふ。龍麻ったらはしゃいじゃって♪」
「とりあえずボク行って来るね。」
「おうっ、俺達は出口で待ってるぜ」
「小蒔、気をつけてね」
葵はそう言ってさりげなく小蒔のスカートのポケットに何かをつっこんだ。
その行為に全く気付かない二人。そうして第二の犠牲者は決まったのだ。

----ミラーハウス内にて-----
「う~~~ん。先に進めねぇ・・・・・」
龍麻は見事に迷子になっていた。その横をついて歩いていたマリィは少し疲れているようだ。
「オニイチャン、マリィおなか減ったヨ」
「ん?そうか。それじゃあさっさと出ることにスッか」
そう言って龍麻は己の気を練り、前方のカガミに向かって叫ぶ。
「掌底発剄」
------ガッシャーーーン--------
ガラスが見事に砕け散って前方にぽっかりと道が開ける。
「オニイチャン、そっち出口じゃないみたい」
「あれ?んじゃこっちかな?『掌底発剄』」
------ガシャーーーーーンッ------
今度も見事に道があくものの、そっちも出口の方角ではなかったようだ。
----ぶちっ------
嫌な音がして、龍麻がゆっくりと魯班尺を装備した。マリィがさっと龍麻の後ろに立つ。
「必殺!秘拳鳳凰×3!!!」
-----------グワッシャーーーーン------------------ 「うわーーっ」
前方攻撃を前右左を向いて3方向に放つ。見事に周囲を囲んでいたガラスが消えた。
「アレ?イマ悲鳴が聞こえナカッタ?」
「いや、聞いてないぞ。あ、出口みっけた。行こうぜマリィ」
こうして二人は無事に表にでれたのだ。

「おっ、でてきた。俺先に行くわ。美里は小蒔をまっといてくれ」
「ええ、わかったわ」
走っていく京一を見送る美里。
-------ゴゴゴ・・・・・----------------
その後ろで崩壊していくミラーハウス。
「あら、困ったわね。中に小蒔がいるのに」
「さっき小蒔のポケットに草人形入れておいたから、大丈夫よね♪」
そう言って美里はがれきの山を後にした。

そして・・・軽く食事を済ませた二人が来たのは、この遊園地で一番人気のジェットコースター乗り場である。
もう喜びと興奮を隠しきれない龍麻がマリィに向かってほほえむ。
「楽しみだな、マリィ☆」
「うんっ、オニイチャン♪」
そして浮かれる二人の後方に彼がいた。
「何か嫌な予感がするぜ・・・・」
その意見は正しいだろう、京一よ。
そして・・・・いよいよ破壊神達を乗せてコースターが発進した。

「わーーーーーーっ♪」
「キャーーーーーーーーッ☆」
「ひえええええええっ」

そして・・何事もなく龍麻とマリィはジェットコースターを20周ほど乗った。
そして20週終了後のコースター内より。
「ああ、おもしろかったっ」
龍麻が浮かれている。
「ソウだね、おもしろかったよね。オニイチャンッ」
マリィも嬉しそうだ。そしてその二人の後方では・・・
「うえええ・・・気持ち悪・・・・」
律儀に20週つきあった京一が真っ青な顔してよろけていた。
「さて、もうそろそろ行こうか」
-------バキッ----------
「・・・・あれ?」
龍麻の手の中には外れた安全シートがあった。しかも見事に背もたれも外れている。つまり、乗っていた席をそのまま一つぶっ壊したのだ。
「・・・・さすがに・・・やばいか?」
少し汗をたらす龍麻にマリィが微笑みかけた。
「オニイチャン、マリィに任せてっ」
「Yeahh!!Jesus!!」
朱雀変発動。マリィの髪の先が炎色に染まり、瞳が赤く燃えさかる。
「Go to blazes!!」
-----どごおおおおおおおおおおおおおおおおっ--------「うぎぁあああああああ」
マリィ最大の奥義『シュオルアナス』が放たれた。
コースターが見事に燃えはじめる。
「アレ?何か変な叫び声が聞こえなかったか?」
「ウウン、マリィ聞いてないヨ」
「そっか、じゃあ気のせいだな。よし、ついでにこのコースター跡形もなくしちゃおう!!」
「ワーイッ」
「ではっ、『必殺!!秘拳黄龍!!!』」
----ぼごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ--------「ぎえええええええっ」
辺り一面が真っ白な光に染まり、治まったときには乗り場自体が消滅していた。
ほっと一息つく二人。
「さて、帰ろうかマリィ」
「ソウだね、家で葵オネエチャンが待ってるし♪あ、龍麻オニイチャンッ」
「ん?なんだい?」
「今日はアリガトウッ、マリィこんなに楽しかったのハジメテだよ」
満面の笑みで放たれた言葉に、龍麻も極上の笑みを返す。
「こっちこそ、有り難う。マリィ」
二人は上機嫌で半崩壊した遊園地から去っていった。

「あらいけない。早く帰らないとマリィが先に家についてしまうわ」
そう言って燃えさかるコースター設備に見向きもしないで美里も遊園地を後にした。

「タダイマーーッ」
「あら、お帰りなさいマリィ。今日は楽しかった?」
「ウン、たのしかったヨ。葵オネエチャン♪今日はネ、最初に・・・・」
「ちょっと待ってマリィ。もうすぐ夕食ができるからその時聞かせてるれる?」
「ウンっ」

この日の夕食の団らんはとても楽しいものだったのはいうまでもない。
ちなみに遊園地は2ヶ月の休園、真神の3人は一週間ほどその姿が見えなかったそうな。

-おしまい-

09/26/1999