サーノ
ピンポーン───
「お? 誰だ? ひーちゃん、今日誰か来るのか?」
首を横に振るのを確認して、京一はドアを開けた。
「…誰もいねェな。何だよ一体……ん?」
ドアの外に置かれた、小振りの箱に気付く。
どこからみても「プレゼントです!」と言わんばかりの包装にリボン。
「…?? コレを置いて逃げたのか?」
いつの間にか龍麻も側によってきて、一緒に京一の手の中の箱を見つめている。
「カードが入ってるな。」
何気なさそうに、京一はメッセージカードを開けた。特に龍麻からは抗議の声もあがらないことにホッとする。
(…ヘンなヤツからだったら、ひーちゃんが可哀相だからな! 先に俺が見てやるんだ。…べ、別に他意はねェぞッ)
自分に言い訳しつつ中を見ると、そのカードにはこう書いてあった。
「はっぴばーずでーDearひーちゃん☆
日頃の感謝を込めて、僕らからのプレゼントです。
受け取ってくれないと「秘拳・黄龍」だよ?☆
それじゃね!(逃走)
ばい.緋勇龍麻fromえみり」
「……………………。」
「……………………。」
「ひーちゃん…こいつ、知り合い? 同姓同名みたいだ…けど(汗)」
首を傾げつつ、龍麻は箱へと手を伸ばした。
「…なんか、ヤバくねェ? 開けないで捨てた方が…」
しかし、躊躇わずリボンをほどく龍麻を見て、京一もゴクリと唾を飲み込んだ。
箱の蓋に手がかかる。
そして───
「うぎゃあッ!?!?」
驚いて飛びすさった拍子に、京一は玄関の壁に後頭部を打ってしまった。
「あでで…」
そのまましゃがみ込み、頭を押さえる。
少し痛みが収まると、ガバッと立ち上がって箱を龍麻から取り上げた。
「…びっくり箱じゃねーかよッ!! んなろー!!」
箱からは、長く赤い舌をべろりと出したおもちゃの首が飛び出している。
「そ、それも、何でこんなリアルな首なんだよッ。干し首みてーじゃねェかッ…」
蛮族の風習により造り出された干し首のような、しわしわの小さなミイラのような首に、仕掛けた人物の底意地の悪さをみたような気がする(笑)。
腹が立つよな、と言おうとして龍麻を振り返り、特に驚いた様子もないことに気付いて、京一は言葉を飲み込んだ。
こんなちゃちいモンに驚くのは俺だけってことかよ。チクショウ。
だけど、普通は驚くだろ? ヤバイものじゃねェかと緊張して見てるとき、こんなもんが出てきたら。
…それとも。
龍麻は知っていたのか? 悪戯が仕掛けられていること。…いや、悪戯を仕掛けそうな人物からのプレゼントだってこと…。
それほど龍麻と親しい人物なのだろうか…
妙な焦りと怒りから、京一はそのびっくり箱の首を引き抜いてしまった。
「…あ…わ、悪りぃ、ひーちゃ…」
しかしその時、首が固定されていた箱の底が一緒に取れて、その下から紙片が2枚、ひらひらと床に落ちたのである。
拾ってみると、それは遊園地の無料招待券だった。
「……本物か?」
だとすれば、やはり本当に誕生日プレゼントで、上の首は「ちょっとした茶目っ気」というものだったのだろうか。
悪意を感じたのは気のせいなのだろうか…。
「…ま、まァ、良かったな、ひーちゃん。遊園地のチケットだってよ。2枚あるし、誰か誘っ…」
……誰を?
龍麻は誰を誘うだろう。
美里? 小蒔とかアン子ってことはねェな。それとも高見沢とか、最近頻繁に尋ねてくる織部姉妹のどちらかってことも…いや、真面目なひーちゃんのことだ、男を誘うかも知れねェ。醍醐…はねェな、その図は寒すぎる。第一醍醐は、絶叫マシンも苦手なのだ。アランとか雨紋は大喜びで来るだろう。それとも如…
「…ッ! ひーちゃん! 俺、ちょーど遊園地行きたかったんだ! 一緒に行こうぜッ! なッ!?」
「………」
遊園地のチケットをじっと見つめていた龍麻は、ちらりと京一に視線を走らせると、こくりと頷いた。
「おっしゃ! 善は急げだ、もー早速行こう! 今すぐ行こうッ!」
如月と一緒に、なんてことだけは絶ッッッ対に避けねばならない。
店での思わせぶりな態度といい、夏祭りに、強引に龍麻に揃いの浴衣を着せたりしていたことといい、わざと京一を挑発することといい。
間違いない。如月は…
───真性ホモだッ!!───
(男同士の恋愛なんて、俺にはちっっっっっとも理解出来ねェ。コイツなんて特に、どんな男よりも強えェしスキもねェのに、アイツの目には色っぽく見えんのか?
そりゃァ見栄えはいいってのは認めるぜ。こんなウゼェ前髪切って、ちゃんと顔が見えるようにしたら、相当イイ線いってる。…オ、俺ほどじゃねェけどなッ。
醍醐だの紫暮みてェにただゴツイんじゃねェし、無駄な筋肉ついてねェから着やせして見えるし、俺らとバカ話したりふざけたりしなくて神秘的ってのか、雰囲気がちょっとこう…
こうして見ると…まあ…男でも……………)
……ってオイッ!! 何考えてんだ俺はーッ!!
かなり妙な方向に行ってしまった思考を無理矢理戻して、京一は龍麻の肩をポンと叩いた。
「さ、行こうぜひーちゃんッ!」
「………ああ。」
(あのホモ野郎からひーちゃんを守ってやらねェとな!)
(わ〜い♪ わ〜い♪ 京一と遊園地でデートだ〜♪ 誰だか知らないけど、いいもんくれてありがと〜〜!)
結局、いつまで経ってもすれ違い続ける二人であった───
完。
12/09/1999 Release.
てなわけで…修練場に投げ損なったものをこっそりアップしたりして…てへへ☆