− プロローグ −
それは突然の出来事だった。
仄かに光る苔、カビと土、微かに混じる血の匂い、漂う化け物達の気配…既に馴染んだ旧校舎地下。
50階ほど降りたところで、他より少々広さのある窟内に足を踏み入れた龍麻は、唐突な地面の揺れにバランスを崩した。
(どわわッ!? じ、地震! 大変だ、火の元確認〜ってこんなところに火の元はないやろオレ(びしッ)。関係ないけど「地震、雷、火事、オヤジ」ってどういう意味なんだろな。たまに聞くけど…「嫌われるものワースト4」とか? うう〜オヤジ哀れや〜)
心漫才に走れる程度に揺れは小さく、すぐに治まりもしたのだが、龍麻は慎重に辺りを見渡した。
岩や土塊の起伏の激しい、足下の不安定なフロアである。有害な異臭を放つ液溜まりもところどころに見える。
こんな場所では転ぶだけでも被害が大きい。
龍麻は仲間達の無事を確かめ、今後どうするかを相談すべく、後ろを振り向いた。
- 龍麻
- 「……無事か?(暗くて見えにくいよ〜大丈夫かなみんな…)」
- 小蒔
- 「緋勇クン…!? ボクと葵なら無事だよッ」
- 京一
- 「ひーちゃんこそ無事か?! さっきバランスくずしてただろ。」
暗くてよく見えない中を、それでもよく響く声で仲間の心配をする龍麻の元に京一が駆け寄りながら声をかける。
- 雷人
- 「俺様たちも大丈夫だぜ。なぁ、アラン」
- アラン
- 「HAHAHA〜! このぐらい平気ネ!」
そのとき醍醐がいないことを、いったい誰が気づいていただろうか。
- 龍麻
- 「…早めに…上にあがった方が……いいかも…しれない(上手く言えないって困るよな…こういう時だってさ…しくしく)」
- 京一
- 「なら、早く上に行こうぜ。何かやばそうだしなァ」
- 京一
- 「あ、ひーちゃん!そこはッ!!」
見ると、足元には『振れるな危険』の怪しげな水溜りが…。
- 龍麻
- 「……っ!」
京一の声に気を取られたのか、大きくバランスを崩した龍麻を素早く如月が支える。
- 如月
- 「大丈夫かい、龍麻。なるべく早くここからでたほうが良さそうだ………みんなそろっているのかな?」
- 小蒔
- 「緋勇クン…、大変!醍醐クンがいないよッ!?」
- 京一
- 「なっ……! ホントだ、醍醐の奴、一体何処行っちまったんだ!? ひーちゃん! あいつ見なかったか!?」
慌てた様子で龍麻に駆け寄る京一。然し、さり気なく如月から龍麻を引き剥がし、自分の方へと引き寄せた。
- 龍麻
- 「……(ほ、ほんとだ。醍醐いないじゃん〜。どこいったんだよ〜〜)…あ!)」
声をあげた龍麻の見た先には、なんとも奇妙な物体がぷかぷかと浮いていた。
- 龍麻
- 「(何だありゃ? 風船? バルンガ? って今時の若者がそんなもん知るかッ。(びし))」
- 京一
- 「な、何だありゃあッ!? 肉まんが宙に浮いてるぞッ! ひ、ひーちゃん、ありゃ敵なのかッ!?」
肉まんが浮かぶというのも十分奇妙な光景だが、その大きさが普通ではなかった。
- 如月
- 「直径1mってとこだね。下の水たまりから湯気が上がっているのは、コイツと何か関係があるのかもしれない。」
- 雷人
- 「オイ、彼処!!」
雷人が叫ぶ。その指さす先には、肉まんと思われる物体から飛び出している足。だが、その足は微動だにしない。
- 龍麻
- 「(き、きゃー! あ、足!? 何で肉まんから出てるんだよー! しかも、アレって…)」
よく見れば肉まんから出ていると言うより、肉まんに埋まっていると言う表現があっているかもしれない。靴を履き、黒いズボンが見える。
- 小蒔
- 「ね、ねえ! アレって醍醐君の足じゃない?!」
- 葵
- 「えッ、醍醐君!? だったら、はやく降ろしてあげないと…」
- 小蒔
- 「でも、どうやって!?」
- 壬生
- 「……これでも使うかい?」
と、取り出したるは一本の針。
- 小蒔
- 「それで肉まんを割っちゃうんだね♪ …で? 誰がやるの?」
一同顔を見合わせる。誰があんな得体の知れない肉まんモドキに対峙したいと思うだろうか。
大体針である。なんたって針である。手までの距離が異様に短いのである。
- 雷人
- 「っつーかよ。針なんてそんなまどろっこしーマネしねェで、剣かなンかでズバっとやったらどうだ?」
- アラン
- 「OK BABY!! ボクが来たからもうアンシンネ!!(構える)」
- 雷人
- 「ちょ、ちょッと待てェーーーーー!!!」
- アラン
- 「…ッ! ナンデ止めるネ雷人! ボクに任せておけば大丈夫♪ 龍麻もそう思うネ?」
- 龍麻
- 「待て、アラン。(そんな銃なんかで撃ったら中の醍醐君がどうなることか! こわいよ〜〜こわいよ〜、なんで雨紋以外誰も止めないんだ〜(しくしく) 大体、どうやって醍醐君あんな中にはいったんだろう、もしやお腹がすいて肉まんを食べようとして反対に食べられた?! って、んなわけないっちゅーねん(ビシ) ああ、混乱してるせいか心漫才も弱いよ〜〜〜)」
- ミサ
- 「う〜ふ〜ふ〜ふ〜。そうよ〜。それは壊しちゃ駄目〜」
ぴぎゃッ!! と(心の中で)飛び上がって、龍麻がおそるおそる振り返ると……、そこには裏密。しかし、龍麻の目はその後ろのモノに釘付けになった。
- 京一
- 「う、裏密…っ! (声が裏返っている)お前の後ろのそれ…!?」
裏密の背後にいたのはなにやら毛むくじゃらの物体。それの眼があるのであろう窪みはまっすぐに肉まんへと向っていて。
- 龍麻
- 「裏、密。…それは……?(うわーん怖いよ〜! 何!? 何なの、アレ? ご友人ですか? 裏密ってムッ○のお友達が居たの? いやでも、○ックみたいに頭にタケコプターないし…ってそういう問題やないやろ(ビシ))」
明らかにそれは赤色ではなく茶色であったが、龍麻の頭の中は何故ム○クが此処に居るのかでいっぱいだった。茶色の毛むくじゃらのそれは、無言のまま裏密の後ろに立っている。
- 裏密
- 「う〜ふ〜ふ〜…心配しないでぇ〜…この子は大丈夫よ〜…」
裏密がその毛むくじゃらに目線を送る。すると、それは肉まんの方へ向かって歩いていった。
静に歩を進める毛むくじゃら。が、しかし…。
- 京一
- 「でッ…デカくなってる!! コイツ、デカくなってってるぞ、ひーちゃん!!」
- 龍麻
- 「(ホントだ…大きくなってるよ、怖いよ〜! だ…大モンガ〜!? こっちも巨大ロボットに合体しないと…って旧校舎じゃそこまで巨大になれないっちゅーねん! その前にツッコミ所が違うやろ自分!)…食べる、つもりなのか…?」
あきらかに食い気でムンムンしているムッ○の接近に、肉マンはブルブルふるえた。
- 龍麻
- 「…俺がやる」
- 京一
- 「!!!……ひーちゃん!?」
「俺がやる」って何を? 自分で肉まんを食べるつもりなのか、ムッ○を倒すつもりなのか、意外なところでムッ○の方を食べるつもりなのか!? その場にいた全員の間に緊張が走った。
- 龍麻
- 「……仲良く、しろ…。」
- 小蒔
- 「緋勇クン……」
皆が見守る中、龍麻はム○クと見られる物体の手と肉まんの手(?)をがっちりと握手させた。
- 京一
- 「ひ、ひーちゃん……(ムッ○のくせにひーちゃんに手を握ってもらってるんじゃな……あ、いや違う、そうじゃなくてだなッ、こんなやつらでも仲を取り持とうとするなんてひーちゃんってなんていい奴なんだっ)」
- ム○ク
- 「……(力いっぱい抱きしめる───それだけだ)」
その思念は、全員の内側に響いた。醍醐にも伝わったらしく、皮から突き出た足がバタバタしている。委細かまわず肉マンと○ックはひし、と抱き合った。
- 龍麻
- 「…よし」
龍麻が呟いた時、全員が目を丸くした。ム○クと抱き合った肉まんがどんどんしぼんでいくではないか。
- 小蒔
- 「え、どういう事…?肉まんの中身って…ないの?」
誰だってそう思う。まるで風船のように徐々に小さくなっていき、段々地面へと降りてくる。
- 龍麻
- 「……ッ(やっぱり、あの肉まんもどきはガチャ○ンだったのか!ガチャ○ンとムッ○の友情…いいもんみたよなぁ!)」
ガチャ○ンも多少毛色が違うようで、その体は青色に染まっていた
- 醍醐
- 「んんんんッ!んん!!(じたばた)」
○チャピンとムッ○に挟まれ、苦しそうにもがく醍醐を無視し、その場の全員が感動に浸っていた。
- 如月
- 「…さて、じゃあもうそろそろ醍醐君を出してあげないかい?」
たっぷり10分程経った後、ガ○ャピンとムッ○の感動シーンに口を出すのがはばかられ、今まで黙っていた如月が口を開いた。感動の抱擁はどうでもいいが、雰囲気におされて何も言えなかったのだ。
- 龍麻
- 「そう、だな。(う〜ん、やっぱりもうちょっと見たかったけど、さすがに醍醐に悪いよな〜。あ、でもガチャ○ンと○ックは明日も収録あるから返さなきゃだよな!)」
龍麻が重々しく告げた言葉にみんなが頷き、ムッ○を連れてきた裏密がすぅっと抱きあうガチ○ピン、○ックの側へと近寄る。
- ガチ○ピン
- 「………(いやぁん、このコってばおニクがワタシ好み! 持って還っていいかしらん?)」
- ムッ○
- 「……(このゴツイ感触…好みだ)」
- 小蒔
- 「何? 醍醐クン! 胃薬!?」
駆けつけた小蒔が、いつもの錠剤を二三粒押し込んでやった。
- 裏密
- 「う〜ふ〜ふ〜…そろそろ元来た場所へ帰るの〜」
- 京一
- 「裏密…おまえ、まさか今までの事何か知ってんのか…!?」
京一の一言がやけに大きくその場に響いた。…その横では、いきなり錠剤を口に押し込まれたきり、ぐったりしている醍醐の横で「醍醐君、も〜心配したんだゾ!」と明るく小蒔が笑っていた。
- 裏蜜
- 「う〜ふ〜ふ〜、ムッ○はガ○ャピンが〜、大好きなの〜。」
- 京一
- 「いや…そーじゃなくてだな…。」
- 裏蜜
- 「人の話は〜、最後まで聞きなさい〜。ムッ○は〜ガ○ャピンが〜異世界に召喚されちゃったから〜、心配で出てきちゃったの〜。」
という事は何かい?そのガ○ャピンを異世界に召還したのはお前なのか裏密!其処にいる面々は、この惨事?の原因を作ったと思しき人物に心の中でツッコミを入れた。(あくまで心の中だけで…)
- 如月
- 「ま、まあ何事もなくて良かったよ。」
醍醐にしてみれば、何事もなかったどころの騒ぎではないのだが、あえてその事には如月は触れなかった。
- 如月
- 「では先を急ごう、この先何があるかわからない。十分注意してくれ。」
そう促した如月の背後に、何故か皆が注目している
その視線に気が尽き、如月は如才なく懐から忍刀を取り出し、振り向きざま構える。と、そこに存在していたのは…
- 龍麻
- 「(…え、ええええ?! もしかして、あのあからさまに顔丸出しなネズミのコスチュームを着込んだ二人組は、爆笑○題のお二人!? て、どうみてもそうだよね、ね! ね!! 俺、ファンなんだよ〜もう神様と崇め奉るぐらいに!! どうしてこんな所に?て、ガチ○ピンとム○クを向かえに来たのかな? 面白いだけでも無く、義理人情に溢れた人達なんだなぁ〜。帰る前にサインと握手してもらえないかな〜…って、如月! いくら驚いたからって俺の尊敬するお二人に、いつまで忍刀向けてるんだよ!! 失礼だろっっっ怒らせてサインと握手してもらえなくなったらどうするんだよ!!!)………なにをしている」
地の底から響いて来るような滑らかなバリトンに反応したのは、その質問を向けられた如月ではなく、爆笑○題の、背の低い方だった。
- タナチ○ー
- 「いやーすみませんね、ガチ○ピンとム○クが世話をかけたみたいで。もうすぐ本番なんで向かえにきたんですよ。ほら、帰るぞ2人(?)共!!」
- ガチ○ピン
- 「…………(いや〜ン。あのおニクも一緒に還るの〜〜〜)」
- ム○ク
- 「…………(もうあの固さを手放せない……)」
小蒔の介抱あってか、少し落ち着きを取り戻しつつあった醍醐は、その思念を聞かされて地面にめり込み痙攣しはじめた。
はっきり言って、皆どうしていいか判らなかった。リーダー的存在の龍麻は何も言わず、ネズミの着ぐるみを着込んだ二人組を見据えたまま動かない(本人は見つめているつもり)。ただただ、静寂だけがこの場に残る。
その静寂を一番最初に破ったのは、アランだった。
- アラン
- 「オーウ、二人が帰りたくナーイだったらミーンナVSソコの四人で、コレを使って闘えばOKネ!!」
アランが指差した先には、いつの間にあったのか、巨大なジェンガが置いてあった。しかも綺麗に積み立てて。
一体何時の間に?と他のメンバーがどよめく中、爆笑○題を見つめたまま微動だにしなかった龍麻が、すっと一歩前へ出た。
- 龍麻
- 「やろう。」
- 京一
- 「ひ…ひーちゃん…(なんてすげぇ氣だ。あの訳分かんねぇ連中に、俺らが感じ取れない何かを感じているのか?)」
実際は龍麻の心の中では、天使がファンファーレを鳴らし紙吹雪を盛大に撒き散らしているような状態だった。(キャ〜!! まじでまじで?! 何時もTVで見ているようなコントが、憧れのお2人と出来るのか? ビバッ裏密・アランっ今ならお前らとワルツでもフォークダンスでも踊ってやるよ〜〜〜って実際は出来ないんだろうけどなっ(ビシッ))浮かれ過ぎて心漫才もなんだか定番臭い。
- 龍麻
- 「京一…手伝ってくれ。(だって、あれって確か複数でやる踊りだったから、オレ、子どものときはあんまり参加させてもらった記憶がないしなあシクシク…ってそれはジェンカやろ(ビシッ)…じゃなくて、あんな巨大なジェンカ、コントしながら動かすなんて、相方なしじゃ厳しいよ〜。頼む京一!)」
- 裏密
- 「う〜ふ〜ふ〜。あのジェンガを組換えると〜。ミサちゃんも、どうなるか詳しくは知らないけど〜、次元にも作用するらしいから気をつけてね〜。」
- 京一
- 「う…っ!あれ、そんなヤバイ奴なのかよっ!!」
- 雷人
- 「ていうかよ、次元に作用するって、どういうことなんだよ?なぁ、アラン。」
- アラン
- 「Oh、ジゲンはナイスガイなスナイパーネ。ボクも射撃が得意デース。キョーチよりボクの方がナイス相棒よ、アミーゴ!」
- 雷人
- 「ってまたコイツは何と間違えてやがンだ? よく解ンねェけど龍麻サン、助っ人が要るなら俺もやるぜ!」
- 龍麻
- 「…(全く、雨紋はちゃんとアランにつっこまなきゃ駄目だろ! 此処に漫才に長けた二人がいるんだから! 『それはルパ○だろー!』とか言わなきゃ! あぁ言いたいけど、この間は…何??)。」
心漫才に夢中になりすぎていて、全く人の話を聞いていなかった龍麻であった。雷人もアランもそれ以上何も言えない。只、ひたすらに言葉を待つが、話を聞いていないのに言える訳もない。
- 京一
- 「だああ! うっせーなお前ら!! ひーちゃんは俺に手伝えって言ってんだ。大人しくお前ら2人で組みになりやがれっ」
見つめあう龍麻と雷人・アランの間を邪魔するように、京一が割り込む。(実際邪魔したのだろうが)何時の間にか、二人一組であの巨大ジェンガに挑む事に決定しているようだったが、異次元からいらっしゃったお客人?達もちょうど2で割り切れるので異論は無いようだった。
- 裏密
- 「じゃ〜あ、審判は〜ミサちゃんがするわ〜。まずは〜ガチャ&ムツコンビから〜、は〜じ〜め〜」
ガチャ&ムツコンビって…と周囲が心の中でつっこみを入れる前に、裏密の指示に従って異次元着ぐるみ達はおもむろに巨大ジェンガを動かした。
- 龍麻
- 「…?! 待てっ(うっうわージェンガを動かしたとたん、地震が?! よく分からないんだけど、これってただの負ければ罰ゲーム系のコントじゃなかったのか???)」
待てと言われても、一度動かしてしまったものは元には戻せない。周囲が慌てる中、揺れはどんどん酷くなって行く。
- 裏密
- 「やっぱり〜次元が不安定になってたみたい〜。召喚者達は存在事態が不安定だから〜もうこの空間には留まっていられない〜」
裏密のその台詞に、ちょっと混乱していた龍麻は敏感に反応した。
- 龍麻
- 「(え? え? それって、どういう意味?! もう帰っちゃうのか? まだ、まともなコントもサインも握手もしてないのに〜シクシク。まっ待って〜〜〜)こっちに来い!」
龍麻のその台詞に反応したのは、それを向けた相手では無く仲間達だった。
- 美里
- 「分かったわ! 皆、龍麻君が固まれって!!」
- 如月
- 「何が起こるか分からないしな。相変わらず君の判断はいつも正しい」
激しい揺れの中、仲間達がわらわらと龍麻の周りに集まって来る。
とうの龍麻と言えば、必死に心の中で焦っていた。(うえええ〜ん。違うんだ〜。俺は爆笑○題のお2人に、サインと握手を〜〜〜)
- 京一
- 「おいっ。如月! ひ〜ちゃんにあんまくっついてんじゃねぇ!」
- 如月
- 「君にそんな事を謂れはないな。…龍麻、そこは危ない。もっと、こっちへ。」
- 龍麻
- 「まだ、アイツ等が…(心配してくれるのはありがたいんだけど〜まだ向こうに居るんだよ、あの八人が!) 早く、こっちに…(来てサインと握手を!!)」
龍麻が必死に見つめるPキ○ズコンビ達は、その切実な視線に気がつく事無く、存在感を薄めて行く。いっその事駆け寄りたかったが、激しい揺れと仲間達に囲まれて身動き出来ない。
- タナチ○ー
- 「ああ、もうこんな時間だ。良い子の皆!また来週もこの時間に…」
- Pキ○ズメンバー
- 「ポ○ポ・ポ○ポ・ポ○キッキーーー!またね〜〜〜!!!」
爽やか?な笑顔を残し、消えて行ってしまった。これに大きな痛手を負ったのは龍麻だ。思わずガクリと膝をついてしまう。(もちろん顔には、ちらっとでも表れない)
- 龍麻
- 「……醍醐(ガチャ○ンに抱きかかえられたまま行っちゃった。…って本日のゲスト!? ああ、早くウチに帰って確認しなきゃ)」
- 桜井
- 「だ、醍醐くん!!!」
- 京一
- 「おい、裏密! 醍醐は一体どうなったんだよ!?」
- 裏密
- 「私には〜何とも言えないわ〜。ただ〜とても危険な状態かもね〜?」
その言葉に誰もが裏密を見た。しかし本人は顔色一つ変えていない。そんな裏密に京一が迫った。
- 京一
- 「おい…どういうコトだよ? アレを呼びだしたのはお前じゃなかったのかよッ!?」
- 裏密
- 「…私に言えるのは〜、異次元に行ってしまったのならば〜、危険という事だけよ〜…人間が居ていい場所じゃないわ〜…」
- 龍麻
- 「……醍醐は、どうなる?(ええっ!? どうなるか分からないってそりゃもちろんドラ○もんが引っ張り出すまで出てこれないってそりゃ4次元ポケ○トだって(びし)」
- 京一
- 「き、危険って…裏密お前、一度呼び出したんだから、また呼び出せねーのかよッ!」
- 裏密
- 「…次元の渦に飲み込まれてしまうわ〜。」
- 美里
- 「醍醐君は、…醍醐君はどうなってしまうの…?」
その時、少し先の地面が微かに光っているのに龍麻が気づいた。よくよく見ると、それは渦のようになっている。
- 龍麻
- 「…?(なんだ? あれ…渦巻き? タイフーン? いや、風ないし(ビシ) あ、中央から何か出てる…)」
- 女神様
- 「貴方が落としたのは、この少し愛想の良い醍醐雄矢ですか? それとも少し格好付けの醍醐雄矢ですか?」
暫しの間、誰も二の句が告げなかった。目の前で起っている出来事を脳が正しく判断する事が出来なかったのだ。何時に間にか、激しく揺れていた大地も大人しくなっている。後で考えてみると、それは目の前の非常識な女神と、その両脇に佇む二人(?!)の醍醐達が現れてから、治まっていたらしい。
- 愛想の良い醍醐
- 「さっきは大変な目にあったネ。HAHAHAHA」
- 恰好付けの醍醐
- 「フッ…。心配したかい? 龍麻」
- 京一
- 「よお、タイショー×2…って何で増えてんだよッ! しかも中味がアランとバカ旦那じゃねーかッ!」
- 龍麻
- 「………。(おおッ流石京一、見事なノリツッコミだぜ!(ぐっ)」
- アラン
- 「ホワ〜イ? キョーチッ。ボクはーあんなにカルくないヨ!」
- 如月
- 「…バカ旦那とは誰のことだい? 京一君。」
- 愛想の良い醍醐
- 「なに言ってるカ! ボクは醍醐デース! 軽くないネ。公式設定100kgデース」
- 格好付けの醍醐
- 「ああ、それでいったら僕の方が随分軽いね。」
- 藤崎
- 「体重の話は止めなッ!!」
ダイエット中なのか、鬼気にも似た怒気を感じて醍醐ズはおろか全員が黙った。
- 女神様
- 「あの〜。で、どちらの醍醐を落としたのでしょう? 私ケツカッチンですのでお早めに願います」
- 京一
- 「女神がぎょーかい用語使ってんじゃねェ! ってゆーか、こいつらは醍醐じゃねェだろ。俺らの落とした(?)のは普通の醍醐だよ、フツーの。」
- 女神様
- 「貴方は正直者ですね。褒美に愛想の良い醍醐、格好付けの醍醐、普通の醍醐を全て差し上げましょう」
女神はそういうと、湖(?)からぐったりした本物の醍醐を引きずり出して京一に投げ渡すと、たちまち煙のように消え去った。
- 京一
- 「どわ〜ッ! おい女神ッ! こっちの変なのはいらねーよッ! どーすんだよコレッ!」
- 如月
- 「京一君…。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、君はあの童話のラストを知らないのかい。こうなることは予測出来ただろう。」
- 小蒔
- 「そーだよ京一ッ。どーすんだよ、醍醐クンがこんなにいたら、醍醐クンち食費に困るじゃないかッ。」
小蒔、さり気に鬼である。
- 京一
- 「お、俺が悪いのかよ…ひーちゃん、どうしたらいい?」
龍麻は思慮深げに増えた醍醐達を見つめている。当然頭の中は少しも思慮深くなどない。
- 龍麻
- 「(どっひゃービックリ! でもよく考えたら兵庫だって二人に増えるんだし、醍醐が増えても不思議じゃないか。てことは不動禁仁宮陣も威力倍増だな! まあ桜井の言うことももっともだけど、増えた二人には食費分働いてもらえばいいんじゃないかなあ。体力仕事は得意だろうし。とりあえず本体の意見を訊こうっと)」
- 龍麻
- 「………醍醐。」
その言葉を聞いて、小蒔と京一は慌てて本体に駆け寄った。
- 京一
- 「そーだった、おい醍醐! 本物の醍醐は大丈夫かッ?」
どうやら醍醐(本体)は気絶しているだけのようだった。微かに「うう」と唸ったが、目を覚ましそうにない。
- 龍麻
- 「(うーん、本物に訊けないんじゃ勝手に家に連れて行く訳にもいかんよな。どうしよ…。仕方ない、本人達に訊いてみるか)…醍醐…?」
龍麻は噛み合わない会話を続けていた中味の違う醍醐達の方を向いて声をかけた。
- 醍醐ズ
- 「ハァイ、アミーゴ!」「何だい?」
- 美里
- 「…みんな『醍醐くん』じゃ、ちょっと不便かしら。」
- ミサ
- 「う〜ふ〜ふ〜。それなら〜、愛想の〜良い〜醍醐くぅんは〜、略して〜『アラゴ』くぅんで〜、格好付けの〜醍醐くぅんは〜、略して〜『カメゴ』くぅん〜って、ど〜お〜?」
- アラゴ
- 「何ダカー妖邪兵のボスみたいだネ、HAHAHA!」
- カメゴ
- 「誰がマッハ3で飛ぶ巨大亀なんだい。」
- 龍麻
- 「(ううッアラゴの方はわかんないけどカメゴのボケにはツッコみたい! れ、練習しなくちゃ、『そりゃーガメゴンやろ!(びし)』『そりゃーガメゴンやろ!(びし)』『そりゃー…』」
- ミサ
- 「う〜ふ〜ふ〜。いい〜ボケっぷりね〜。ミサちゃん〜気に入っちゃった〜。」
- アラゴ
- 「オーゥ、レディに気に入られるのハ、光栄のイッタリアーノデース!」
- ミサ
- 「ひ〜ちゃぁん〜、このコ達〜、ミサちゃんに〜ちょうだ〜い?(可愛い微笑み)(のつもり)」
- 龍麻
- 「(えッ!? 何? ゴメン、ツッコミの練習してて聞いてなかった。ああ、裏密、自分に任せろって言ったのか。大丈夫なのかなー。でも元々、裏密がこいつら出したみたいなもんだしな。任せちゃっていいのかな…どうしよ〜醍醐起きてよ〜! オレこんなこと決めらんないよー!)」
- ミサ
- 「(倒れている醍醐を見つめる龍麻を見て)醍醐くぅんが〜気になるの〜? 本体には〜、迷惑かけないように〜するわ〜。約束する〜。」
- 龍麻
- 「……本当か?(そう? じゃあ醍醐も納得してくれるかな。ワケの解らんもんはワケの解らん人に任せちまえ。っていい加減だなーオレも)…任せる。」
- ミサ
- 「う〜ふ〜ふ〜。ありがと〜ひ〜ちゃぁん。ミサちゃんを〜解ってくれて〜嬉し〜。う〜ふ〜ふ〜ふ〜。」
ええッ!? マジ!?
と全員が呆然とする中、増えた分の醍醐ズは裏密に連れられて行ってしまった。
裏密があの二人を、今後どんな実験に使うつもりなのか。
それを考えると抗議はしたいのだが、力強く裏密に頷いた龍麻に面と向かって異議を唱えるのもはばかられ、結局その場にいた全員は、突然現れて突然の災厄に巻き込まれた(と思われる)偽醍醐ズの無事を祈ってやるしか出来なかったのであった…。
− エピローグ −
後日、特に後遺症もなく元気に登校してきた醍醐に、増えた醍醐達の存在を伝えられる者は誰もいなかった。
そのため時々「醍醐くぅん〜。身体〜なんともなぁい〜?」「腕〜痛まな〜い〜?」などと訊いてくるのは、先日の旧校舎で妙な物体に捕まり気絶した自分を気遣ってくれているらしいと、裏密を見直したりしてしまった醍醐だった。
その裏密も、如月達に「旧校舎の不安定な空間で妙な実験や異次元召喚などはすべきじゃない」と説教を喰らったのだが、丈夫で使い勝手の良い被験体兼使い魔を2体も手に入れたので、しばらくご機嫌だった。
そして今回の出来事で「龍麻は仲間を大事にはするが、時に冷徹な判断も迷わず下す男である」と、仲間達(とりわけ京一)に益々誤解を植え付けたが、普段が普段だけに大した問題でもなかったのである。
- 龍麻
- 「(ええッ!? ご、誤解だよーッ! あんまりだー! 充分大問題じゃないかーッ!)…違う。」
- 京一
- 「(そうだよな。ひーちゃんは冷血非道じゃない。あいつらは裏密に任せたのは、正しい判断だったんだ。そうだよな、ひーちゃん…)分かってるぜ、ひーちゃん。」
というわけで今回も微妙なすれ違いをしている二人であった。
− 完 −
2004/06/07 終結
点線の上と下はサーノの補足文章、真ん中が皆様のご参加戴いたリレー文でございます。
ご参加下さった皆様、ホントに有難うございました!
@お詫び:
以下のものは見やすくするため、また文字化けを防ぐため、こちらで勝手に変更・統一しました。ご了承下さい。(サーノ)
◆句読点は全て「、」と「。」に、その他の記号は全角に統一
◆記号の前後の空白を削除(「!」と「?」の後のみ全空白を挿入)
◆「・・・」の統一
◆二重括弧の削除