【Time/limit】

M童子

こ、こんにちは…(こそこそ)
小心者でアガリ症、単なるサーノ様の一介のファンでゴザイマスッ!m(__)m
一周年…ということで、恥を忍んでお祝いの作品なんぞ…ううっ。胃痛が。
サーノ様の素敵作品及びキャラクタァをパロらせていただけるほどの身分ではないのでス…先刻承知で、それでも精一杯の【愛】を込めて!
うあーん!サーノ様…(脅されても)大好きだ───!!!(脱兎)


<第三者視点>
紫煙をいっぱいに炊いたようなスモークに道を封ぜられ、微かに眉根を寄せて空を仰ぐ。
煙は昇ると良く云ったものだが、この旧校舎はすべてが怪奇の巣窟だ。
「通常」の意識は通じない。
誰から教わるともなく肌で感じる様に、黙したまま語らぬ瞳が…ふいに動く。ごく自然に自分の側に佇んだ影に視線を走らせる。
「キリがねぇな」
呟いた低い声の主に僅かに頭を振って応え、青年はそのまま軽く拳を構え、臨戦態勢をとった。
仕草から闘いの予兆を感じて、わずかに嬉々とした瞳で木刀をしならせた蓬莱寺京一は不敵ともとれる笑みを口元に佩く。
酷薄さと軽薄さの微妙な境目を持った…人を引きつける明るい笑顔が輝くのを感じつつ、それでも視線は一点、前方を睨んだまま、きゅ、と指を擦らせた。
「キリがなくても、退屈だけはしねェよ。…いくぜッ!ひーちゃん!」
二人の戦士は、眼前に潜むであろう異形を始末するべく、しなやかにその身を躍らせた。

<緋勇・思考>
お、お金なくなっちゃった…。
金銭感覚が狂っているとは思わない。多分、自分でも大事に、計画的…はちょっと怪しいけどそんなに使わないと思う。
でも、どう考えても、何度見返しても龍麻のお財布には福沢さんは勿論、新渡戸さんの姿すらなく、ちょぴり山折りになった夏目さんが一枚、にこやか〜にこちらを見つめているだけだった。
内心動転したまま小銭入れもひっくり返して見る。
(50円)
真ん丸くて〜穴があいてて〜あ、銀色〜。
(はッ!)
我に返って僅かに頭を振る。何だか知らないが今一瞬脳内に高見沢が来た。
(呼んでないのに…)
検討違いなことを考えつつ、龍麻は困ったように手元に視線を落とす。
1050円。家計の、ことに食費のやりくりは主婦にも負けないぜ!なほど得意な龍麻は(いつでも嫁にいけるのー!だから誰か貰って〜って俺男じゃん!)と内心一人ボケツッコミを行いながらも、混乱する頭を落ちつけるべく何度も手元を見つめた。
他人から龍麻の姿を見れば、眉目秀麗かつ寡黙な青年がじっと何かを思案する様に真剣に手元を、しかも1050円きっかりを見つめている様にしか見えない。
…心漫才はあくまでも、彼一人の世界である。
(1050円。あ、舞園さやかのニューシングルが買える。そうじゃなくて!!やっぱり一昨日のスーパーはなまるの特売逃したのが悪かったのかな。うう、昨日の大根の煮つけ、葉っぱも勿体無いから使うんだった。油揚げと大根のお味噌汁にすればよかった)
ぐるぐると考えているうちに主旨がズレていくのにも気がつかず、龍麻は表面的には変わらない表情を、内心百面相させて手中の敵を睨みつける。
(貯金を下ろせばいいけど、もしもの時にしか使いたくないし、今日は多分行けないし…明日…土曜日郵便局………やってない───!!!)
ぴっしゃーん!と心の中に稲妻が走る。
緋勇龍麻、ゆうちょ(※郵便貯金)派であった。
非常に困った事態である。いや、千五十円なら今夜は勿論、充分に土日は生きていける。
だが今日は入り用なのだ。
「ひーちゃん、今日の帰りラーメン食いにいかねェ?
いつもんとこなんだけどよ…へへっ、なんとなんとなんとッ!
季節限定特盛りチャーハン付きラーメンセットが980円!ジュース込みで1100円!しかも時間制限つきで1時から5時までなんだよ〜。
速攻真神出れば間に合うだろ?なぁなぁ、ひーちゃぁん」
(勿論さ!友よ!!)←心の中で拳を掲げ。
龍麻にとって非常に貴重で自分のことを理解してくれている相棒の言葉に「断る」ことなど思いもしない緋勇龍麻である。
それなのに1050円。
一生懸命財布を漁ってもひっくり返しても引っかいても撫でても、神主さんが榊を振る様に左右にゆさゆさと振ってみても1050円。
その季節限定セット(別名友情のあかしセット)には五十円足りませんでした。
そんなん借りるか、ジュース抜けばええやん、という実に簡単な法則すら思い浮かばないほど彼は混乱していた。
茫然としている龍麻に気づくはずもなく京一は呑気に、「ひーちゃ〜ん」と猫なで声で近寄ってきた。昼食便乗犯である京一は、龍麻の手料理の美味さに味を占めて昼間は龍麻の弁当めがけて猫まっしぐら。
そんな京一の緩みきった顔を物言わず見つめ、龍麻は密やかに決心する。
旧校舎へ行こう───と。

50円バトル。

<第三者視点>
黒耀の瞳に見つめられて、僅かに息を飲む様に京一が立ち止まったのは、夕刻、早く帰ろうと緋勇を急かしていた途中だった。
───すまん、京一」
低音の、響きの良い声が微かに躊躇いを含んで言葉を発す。
「あ…?なに、ひーちゃん、行けねェのか?」
ほんの、僅か。微かな瞳の色合いの変化を見とめ、京一が続きを促す…あるいは、確認する様に注意深く視線を走らせる。
彼の全くの無表情に近いそれから感情を捉えるのは至難の技だ。それでも微妙な変化を逃すまいと、京一は言葉を捜すように舌で唇を湿らせた。
「用があんのか?どっかに───
龍麻の視線がそっと、ほんの少し角度を変える。
息を潜める様に、一挙一動を確認していた京一は、確信を持って明るい顔で笑う。
「なんだ、旧校舎に用があったのか。それならそうと言ってくれよ。
いいぜ、行こう」
アッサリと正門に向かう身体を反転させた京一を、ふと見上げる。
「…いいのか?」
「当たり前だろう、お前と俺の仲じゃねえのよ」
豪快に笑って、手の中の袱紗…木刀をきゅっと握る仕草は、すでに意識を旧校舎へと…その内部へと切り替えていることを静かに物語る。
これほどまでに緋勇の真剣な表情を見るのは、実際数度と無い。
息を飲む緊張感に気分の高揚を押さえきれず、京一は旧校舎へと急ぐ。
無論本日の、夕刻の約束など頭から消えてしまっていた。

その人の言葉に力があると思ったのはいつからだったか。
仕草から、吐息から、動きから発せられる「氣」。
恐れるものはないとすら言いきれそうなほどの、不屈の沈黙。
その頑なな、真一文字に結んだ唇が、言葉を発するとき音は力となって聴覚を刺激した。
ゆえに絶対の信頼が京一にはある。
まるで、緋勇龍麻の言葉に意味なさぬものなど一欠けらもないと疑っていないように。

旧校舎は魔性の息蔓延る場所だ…歴戦のつわもの、屈指の戦士と言えど二人では───此処は少し、辛い。しかし闇より深い双眸の主は、臆することなく奥へ奥へと進み行く。
浅い階層では、魔性のほうが対の光に耐えかねて姿を潜めた。
(本当の敵は更に奥…ってことかよ)
物言わぬ緋勇の背中を見、唇の端を僅かに持ち上げる。
闘いの高揚感が、煩いほどに耳を打った。

<緋勇・思考>
焦る、焦る焦る。
右見て左見てついでに上見て下に視線を走らせる。
(なんでですかー!?)
あと五十円。たった五十円なのだ。
そこらへんの敵を一体、えいっ、ポカリ!とやっちゃえば手に入れられる金額なのだ。
ところが龍麻と京一という強い「氣」に恐れを抱いたのか、出口近くの階層では鬼の子一匹見当たらなかった。
(出てきてくれ、俺の五十円!)
挙動不審なまでに目を皿のようにしてうろうろと辺りを見まわす様は少しアブナげだったが、そんなことはかまっていられない!
後方から何も言わずについてくる友人のためにも!刻々と近づく5時という制限時間…に内心絶叫しつつ血に飢えた狼の様に旧校舎にて敵を捜す。
「しっかしいくら進んでも鬼火一つ、岩陰の下にもいやしねェな」
(えっ?おにぎり一つ岩屋根の下?)
違います。
「へへっ。俺らの強い氣にあてられて出て来れねェって訳かよ…。
まんざら悪くはねえな。こういう気分も───
(俺らの熱い仲にあてられてってうわー!京一!なんちゅーことを!照れるってばッ!きゃっほう!漫才悪くない?え、俺やっぱりお笑いセンスある?!)
動転していた緋勇さん、どう考えても聞き間違えなどしない単語を間違えます。
普段以上のボケっぷりを、けれどもやはり表情に表すことなく炸裂。
「あ、また訊くの忘れるところだったぜ。ひーちゃん、目指す場所は何処…」
(はいぃッ!貴方を殺して私も死ぬ?じゃなくって、え?何京一俺ゴメン今意識ぶっとんでて、聞いてな…)
───龍麻っ!」
怖気のようなものを感じて龍麻は慌てて明日に…否、前方に向かってジャーンプ★した。
「来たぜ、大物───ッ!」
手に持った袱紗から得物を取り出して、京一が頬をにやりと歪ませる。
(来たよ!五十円───ッ!)
京一さん、実は裏切りに合っていました。

煙もこもこ焚きながら登場した敵は、さながら某コスモが居たら喜んでぶちのめすんだろうな〜という程のお約束ぶりで姿を現す。
(五十円五十円五十円五十円)
しかし緋勇龍麻の思考は↑オンリーに埋め尽くされており、龍麻の中ではすでにそんな大物も「五十円(仮名)」になっていた。
カネ○ンより少しだけ金額的に上風味な敵は、龍麻の爛々と輝く双眸に威圧されて僅かにその巨体をずるりと後退させる。
にじり寄りながらも眼光に凄みを利かせて龍麻はぐっと拳を構える。
───行くぞ…!【訳:受けてみろッ!この愛想悪くて幾人もの罪無き人々を怯えさせた恐怖の邪眼ビームを!って…あ、言ってて自分でちょっと傷ついちゃった。ってそうじゃなくて!五十円君!君のお陰で俺は京一と仲良しセット(違)を食べに行けるんだよ!五十円君!(←しつこく)さあ!俺に心を開いて…安心してくれ、痛くしないから───!って、は、歯医者さんっぽい?だから違うっちゅーねん!(ビシィ)】」

<第三者視点>
踵から煙が舞う。それが戦闘の合図となり、踊り出た二人の奇襲に鈍く反応した旧校舎の怪物はずるりと身を伸縮させた。
「ぉおッ」
気合と共に発せられた氣が、京一の刀に帯び、反動をつけるように空を切る。
風圧は空間をものともせず魔性に走り、びしり、と大きな亀裂が巨体を一閃した。
「ひーちゃん!」
一瞬にして態勢を立て直した剣士は荒荒しく怒鳴り、緋勇も呼応する様に静かに利き足を僅かにずらしてその時を待った。
京一の攻撃に錯乱したそれが、狂ったように龍麻に襲いかかる。
「…」
無言で対峙する龍麻は、ふ、と息を吐いて拳を繰り出した。
耳を抉るような轟音と共に敵が沈む───…訪れる、沈黙。
「…ひーちゃん、これ」
敵の完全な消滅を確認して、京一はふと、その敵が散った場所に鈍く輝くものを見つけて顔を上げた。「あ…」
刀、である。鞘と柄を恐る恐る持ち上げれば、しっくりと手に馴染む。
(まさか───
俺の、ために?
如月の様に目利きこそ出来ないものの、京一は昔からの愛刀の用に手に修まるそれを見つめて確信いったように思う…。これは良い刀だ、と。
そして傍らに佇む相棒を見つめて、ふいに溜息が零れた。
(何て奴だよ───
嬉しさに唇がにまりとするのを押さえきれず、京一が何か言わねばと口を開いたときだった。
「…時間…だ。───行くぞ」
くるりと身を翻した龍麻は、京一の礼を、言わずもがな…知っている、とばかり。
「おうッ!」

<緋勇・思考>
ぉおおおおぉぉぉおぉおぉぉぉおぉぉぉお。
緋勇龍麻の脳みそはすでに沸点振りきっていた。5時まで10分。10分〜ッ!
やっとこ深い階層まで降りてきて出会った敵は妙に強くてしつこくて煙まで焚いて、何だか京一専用の得物が手に入ったのだけがラッキーというかお得情報だったのだが〜。
(やった〜♪やったよ五十円〜(くるくるくる〜)
でも京一が最初にアイツ切れ目入れといてくれて助かった〜。あの後思い切り氣を叩きこんだから倒せたけど…よかったよぉ。今日も怖い思いしちゃったけど、五十円のためだもんな!頑張ったよ俺!偉いよ俺!でも自分で誉めてもなにも出ないよ俺!!ってまたズレてるし…。ううっ、心漫才は後ッ!
歓喜の涙を流す前に!いざ真の戦場へ!(※ラーメン屋))

(★****☆****★暫くお待ち下さい★*****☆*****★)

「悪いねェ、兄ちゃん。今日の季節限定セット終わったとこなんだよぉ…。
あと5分はやけりゃねえ」
ラーメン屋の親父の言葉がしみじみと店内に響き渡るのを、龍麻は茫然とした状態で聞いていた。
もうダッシュで旧校舎を脱出して、正門を走り抜け、ラーメン屋に飛びこんで。
しかし時間というのは無常で、龍麻と京一が辿りついた頃にはすでに5時をまわっており…つまりその、間に合わなかったというわけで───(@北の国から)
(ごじゅ、ごじゅごじゅご…ごごごご)
緋勇龍麻は心で血の涙を流す。手の中に握り締めた化け物が落としてくれた銀色の硬貨を握り締めながら、あまりの運命のつれなさに言語障害(思考だけど)を起こしかけていた。
「あッ!そっか、ラーメン屋ッ!」
今更思い出したとばかりに、ぽんっと手を打った京一は明るい笑顔で言ってのけた。
「覚えててくれたんだな…ひーちゃん…(しかも旧校舎に潜って俺専用の武器まで手に入れてくれて…半ば強引に誘ったラーメン屋だったけど、それも律儀に…くう、お前ホントイイ奴だぜ!!俺たちずっとトモダチでいような〜)」
「…ああ…(まにあ…まにああああ【訳:マニアじゃなくって間に合わなかった】)」
「でもよ、明日もやってるみたいだし…明日ガッコ終わったら食いにこねえか?
今日の礼に奢るぜ!!!(礼にもなんねェけど…へへへっ、これぐらいさせてくれよな!)」
───ああ…(俺のごじゅうえん…なんだったんだろ、ごじゅうえん…ふえーん。…えッ!京一お、奢ってくれるの?うわあうれし…五十円───!!!)」
素敵にすれ違い、勘違い。
ラーメン屋の窓の外では、のほほんとした夕暮れの景色が広がっていた。

Time over!!

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お目汚し、大変失礼致しました…m(__)m
しかも長く…うう…すみませ───…(T^T)
一周年…せいいっぱいの祝いの気持ちをこめまして。

M童子 拝

2000/05/24 Release.

 ふふ…脅迫したら、すぐくれた…それもこんなに面白いものを…!
なるほど、学習したぜ! むr(殴)…M童子から作品を戴くには、脅せばいいんだな! 了解だ!
 全く…こんなに上手なのに、何でそんなに腰が低いかね、むら(蹴)…そんなに這いつくばってると…後ろから抱き付きたくな(踏)
 いやあ〜緋勇! そのセコさが本気で素晴らしい! ブラボー! とりあえず「ゆう○ょ」に5000点捧げます!
緋勇(……むらさ(おい!)…はッ。いかんいかん、内緒なんだね。ええと、M童子さん。サーノさん…何だか凄くヤな誤解してるようだけど…いいの? …はッ、お題は「勘違い」だったね。…そ、そっか、じゃあ仕方ないな…)←よし。(にこっ)