からり、と教室の扉を開けた醍醐の目に、放課後の静かな教室で緋勇が机につっぷしている姿が映った。
「なんだ、龍麻……まだ、いたのか」
　声をかけて近づいても緋勇はぴくりとも動かない。
　首を傾げながら、覗き込むと、居眠りをしていたようだ。
「めずらしいな……」
　さて、起こすべきか、と考える醍醐の耳に緋勇の呟きが聞こえた。
「龍麻？」
　目は覚ましていない。寝言か？と耳を澄ますと……。
「……ダメ……京一……できな……」
　ガーンッ！！
　醍醐はショックを受けた。
（た、龍麻！い、い、い、いったい、どんな夢を……！！何がダメなんだ！？何ができないと！！？？）
　思わず胃のあたりを押さえてしまう醍醐。
　そんな醍醐に気づかず、緋勇が見ている夢はといえば……。

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「ちくしょーッ！ヤギューンめ！」
　こめかみから頬を伝ってあごに流れてきた汗を拳で拭って京一は木刀を構える。
「さすがヤギューン……油断するなよ、京一」
「おうッ」
　前方の敵から目を離さず、緋勇はとなりに立つ京一に声をかけた。（夢の中なので思ったとおりスラスラしゃべれる緋勇である）
「フフフフ……」
　不敵な笑いを漏らす敵『ヤギューン』（説明：顔は傷のある赤毛をみつあみにした男（もちろん柳生）で身体はどういうわけかゴジラの着ぐるみ）はカッと目を見開く。
「危ないッ！」
　叫んで左右に飛んで、ヤギューンの目から放たれたビーム光線を避ける緋勇と京一。
　二人が立っていたところが黒く焦げる。
「くそッ、いくらなんでもヤギューン相手に二人じゃ……」
　言いながら放った京一の技は、ヤギューンのしっぽに粉砕される。
「ひーちゃん！このままじゃムリだッ！変身しようッ！」
「ダメだッ、京一！まだ、早い！醍醐が来てないんだ！必殺技ができないッ！」（ちなみに寝言で言っていたのはこの台詞）
「けどッ！」
「もう少しがんばろう！変身は3分間しかできないんだ！！」
　……このへん、どうも、ウル○ラマンと混じっている模様。
「うーッ！タイショーッ！早く……」
「待たせたなッ！龍麻！京一！」
　歯ぎしりをする京一の背後から醍醐の声が響く。
「醍醐ッ！！」
　振り向くと橋の欄干の上に腕を組んで立っている醍醐がいた。
　ちなみに、どうして、橋の欄干があるかは謎である。（夢だから）
「とうっ！！」
　掛け声とともに、正しく両手を上にあげ（その際指先までピッと伸びていることが重要である）欄干から飛び降りる醍醐に、緋勇はにっこりと笑ってみせる。
「よしッ！変身だ！！」
「よっしゃァッ！！」
「おうッ！！」
　左袖を素早くまくり手首につけたごつい腕時計タイプの変身用ブレスを出す。（この場合普段から腕まくりをしている京一は関係ない）
「いくぜッ！変身ッ！」
　大げさなポーズで変身ブレスのスイッチを押す。
　カッと三人の身体が発行する。
「ムッ！！」
　ヤギューンが光にわずかに怯んだ。
　そして彼らの変身は完了した。
「黄龍戦隊、マガミカン！！」
　緋勇を真ん中に決めポーズで名乗る三人。……名前はどうやらサン○ルカン（若いお嬢さんはサンバ○カンを知らないんじゃあ……）からのようだ。どうにも、格好が悪いがそこはそれ、夢だから。
「一気に片をつけるぞ！」
「わかったッ！」
「いくぞッ！必殺！！」
「「「マガミ・ビックバン・アターックッ！！！」」」
　今度はコスモレンジャーかい。節操がないなぁ。
「ギャーッ！！」
　……とりあえず、こうしてヤギューンは倒れた。
「やったな……」
　醍醐が呟くと、緋勇と京一がうなづく。
「良かった……これも二人のおかげだ……」
「ばか、なに言ってんだよ、ひーちゃん。俺たち“三人”で倒したんじゃないか……」
「そうだぞ、龍麻」
「……ああ、そうだな……」
　緋勇は自然に二人に笑いかけた。

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　ガーンガーンと茫然自失している醍醐の耳に再び緋勇の寝言が聞こえた。
「……良かった……」
（何が？ナニが良かったんだ！？龍麻！！）
　恐る恐る緋勇の顔を窺うと、普段見ることのない柔らかな笑み……。
　幸せそうなその顔に、醍醐は再び胃のあたりを押さえ、静かに男泣きをしたのだった。

　意味もなく終ってみる（涙）

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　びくびく……こ、こんにちわ、あかざなぎです。
　すっごく遅くなったんですが1周年記念の贈り物ＳＳです。
　一生懸命「勘違いとバトル。勘違いとバトル……」と思いながら書いてみれば、勘違いしてるのは、あかざ、お前じゃあッ！……という展開に……。
　ちなみにタイトルは、「愛だけはこめておかなければ……△△△……」というワタクシの思いからつけさせていただきましたので、本編との関係は……ひ、ひみつ。
　一応、サーノさんところのひーちゃんたちなんだけどな……。（こっそり）
　うっ、ごめんなさーいっ！！（泣ダッシュ）

2000/07/07 Release.