鬼道衆のすてきな大作戦

ヤージ

いつもサーノがお世話になってます。相方のヤージです。
開設当時はこんなにかわいがっていただけるサイトになるなど夢にも思っておらず、
1年間で26万ヒット記録、本人共々望外の喜びでただただ感謝ですm(_ _)m。
実はまだプレイは終わっていないのですが、とりあえず私も寄稿することにしました。
(サーノと馬鹿話している時に原案が出ました。本当は修練場向きなのですが(^^;;)。)
今後とも(家事を振り捨ててがんばる)サーノに、ご支援の程よろしくお願いしますm(_ _)m。


「大変よ!大変よ!」
いつものようにアン子が教室に飛び込んできた。
「またうるさいののお出ましだ。」
京一はやれやれといったまなざしで緋勇に目配せした。
「どうした、アン子? また事件か?」
あきれながらも醍醐がアン子に声をかけた。
「そうなのよ! ちょっとこれ見てよ!」
荒い息づかいのまま、アン子がポケットからなにやら取り出した。
「おいおい!おまえな!」
京一があきれた声を上げた。
「これ、ただのポケットティッシュじゃねえか? 街でよく配ってる。」
「そうよ。でも、裏見てよ!」
京一が怪訝そうにアン子からティッシュを受け取って裏を見た。
「げ? なんだ、こりゃ?」
「でしょ? でしょ?」
緋勇と醍醐ものぞき込んだ。そこには、こう書かれていた。

『ようこそ 鬼道の世界へ
 あなたも変生してみませんか?』

皆が口をあんぐりしている中、いつものように緋勇だけは表情ひとつ変えていない。
「しかし、なんだこれは、一体?」
いぶかしげに醍醐がつぶやいた。
「さっき駅前でもらったのよ。妙なお面をかぶってたオジサンが配ってたの。新手のチンドンヤなのかなと思ってもらったら、こんなのだったの。」
アン子が早口でまくし立てる。
「妙なお面?」 醍醐がピクッと反応した。
「それって、もしかしたら般若の面か?」
「ううん。」 アン子が首を横に振った。
「ヒョットコなの。」
「へ?」
一同は唖然とした。
「おいおい、なんでヒョットコなんだ?」
京一が甲高い声を上げた。
「そんなの知らないわよ! でも、とにかく何かあると思って飛んできたの。」
「ふむ。それにしてもなぁ。」
醍醐は腕を組み顎に手を添えて考え出した。
京一は緋勇を横目で見た。その目の輝きが増しているのを見逃さなかった。
(やはりひーちゃんは、この裏にあるからくりに気づいているんだな。)
たのもしく緋勇を見つめる京一だったが、緋勇の心は別の方向にあった。
(なんだこれ? 鬼道衆も人材不足なのかなぁ? 確かに最近手応え薄いし。でも今景気悪いしな。人余っているらしいから、案外いい人材とれるかもしれないな。うんうん。こりゃいい作戦かもしれない。さすがは鬼道衆。あなどれないな。)
などと心の中で妙に納得していたのだった。
「とにかく駅前に行ってみようぜ。」
京一が立ち上がった。
「あんたバカじゃないの? もう授業始まるよ!」
「さすがに今から行くわけにもいくまい。
 だいたい、こういうのは朝夕の通勤通学時間帯にやるものだ。
 夕方にもやっているかもしれないぞ。放課後に行ってみるのはどうだ。」
醍醐の発案と同時に始業のチャイムが鳴った。
「そうね、そうしましょう。」 
葵の一声に皆頷き、自席へと戻った。
京一だけは不満そうだったが、緋勇に促されしぶしぶ従った。

「しかし、本当にいるんかよ。もうやってねぇんじゃねぇのか?」
先頭をずんずん早足で進みながら京一が口を尖らせた。
「ま、とにかく行ってみることだ。何かの痕跡があるかもしれないしな。」
「それにしてもなんなんだろ? 前からおかしな連中だとは思ってたけどォ。」
「あ、あれじゃない?」
葵の指さす方向に視線を向けると、そこには体格のいい黒ずくめの男達に連れていかれるヒョットコの仮面の男の姿があった。
「どうしたんだろォ?」
「あんなの勝手に配ってたから、地場の元締めにでも目をつけられたんじゃないの?」
アン子がもっともらしい解説をする。
「とにかく後をつけようぜ。」
京一に促され、一同は男達の後を追うことにした。やがて、男達は人影のない路地裏に入っていった。それを見届け続こうとした矢先、
「グェェェェェッ!」
その路地裏からほとばしるような閃光と共に断末魔のような叫び声が上がった。やがて何事もなかったように仮面の男が身繕いをして姿を現し、駅とは逆の方向に歩いていった。
「なんだ?」
皆が顔を合わせる中、いち早く緋勇と京一が路地裏に飛び込んだ。
「うっ・・・」
そこには、見るも無惨な焼けただれたスーツの男達の躯が残されていた。
「こりゃひでぇや」
「・・・・・・鬼道衆」
ぼそっと緋勇がつぶやく。それを聞いて京一はハッとした。
(そうか。この傷の跡。これは確か雷角の技のもの。やはり鬼道衆だったのか!) 
京一はすばやく振り向くと、仮面の男を追いかけようとした。
「まて、このあたりはまだ人通りがある。もう少し後をつけるんだ。」 
「おい、また待てかよ?」 
京一はすっかり血気盛んになっている。
「アン子、お前はこのことを警察に連絡しておいてくれ。オレたちはヤツをつける。」
「え、また留守番なの?」
不服そうな顔のアン子を残し、一同は仮面の男の後を追った。

夕暮れの中、やがて男は街外れの老朽化した木造アパートに入っていった。本当に人が住んでいるのかと疑うような建物である。
「もしかして、これがやつらのアジトかもしれんな。」
「よし、一気に乗り込んで決着を付けようぜ!」
「だめよ、他に住んでいる人がいたら巻き込んでしまうわ。」
一同がもめていると最中、レスラーかと思われるような巨漢がなにやら小脇に抱えて、そのアパートに入っていった。その出で立ちは、工事現場での日雇い仕事後という感じだが、体格はあの岩角そのものである。そしてまたヒョットコの仮面だ。
「やっぱりアジトなんだよォ。」
小蒔と同じことを皆感じていた。さてどうしたものか?
京一は、横目で緋勇の顔をちらっと見た。こういう時はいつも必ず緋勇が答えを出してくれるのだ。京一は緋勇の言葉を待った。
「・・・オレ、見てくる・・・」
(少人数で忍び込むということか? 確かにあのボロ家では多人数ではすぐ気付かれる。緋勇の身のこなしなら気付かれまい。)
京一は、さすがだと納得すると、続いて声を上げた。
「よし、じゃオレとひーちゃんで様子見てくるから、皆は待っててくれよな。へへ。」
「え、なにそれ。ずるーい。」
小蒔を筆頭に不満顔の3人を後に、京一は緋勇に目配せをして足早に建物へと向かった。

2人は仮面の男達に気付かれないように「気」を消して天井裏に忍び込んだ。その天井の下では、5人の人影がハダカ電球の下で車座を組んでいた。
「どうだ、今日の首尾は?」
「ダメだ。折角いい調子でやっていたのに、余計な邪魔が入ってパアだ。
 ティッシュ配りと一緒に我々の宣伝までやるカンペキな作戦だったのに。まったくやつらめ。
 ま、オレの雷刃光をたっぷりと喰らわせてやったがな。ハハハ。」
「バカ野郎! 今回の計画はまずはカネが目的なんだ。人間を殺すのは2の次だ!
 バイト代はしっかり受け取って来い!」
ティッシュ配りのヒョットコは、リーダとおぼしきヒョットコに諫められ肩を落とした。
「で、お前の方はどうだった?」
「全然ダメ。」
細身のヒョットコが答えた。女の声である。
(てことは、やつが水角か?) 
「“水商売”ってチラシに書いてあったし、経験者優遇で日当もいいから行ってみたのよ。
 そしたら仮面を外せって言うの。別に仮面してたって技は出せるでしょ。
 そう抵抗したんだけど、それじゃ雇えないっていうので仕方なく仮面を外したの。
 そしたら、なんか相手の目の色が急に変わっちゃって、ヨダレ垂らしながら、
 『こういう仕事はまず勉強が必要なんだよ。ワシが教えてあげるからね。デヘヘ。』
 とか言って、すり寄ってくるの。まったく、いくらなんでもなんで私があんなのに触られなきゃいけないの?
 思わずひじ鉄をいれちゃったら邪流突になっちゃって。
 部屋中ぶち壊しちゃって逃げてきちゃって収穫はなし。ごめんねェ!
 などと、若ぶって話をするのも疲れるわい。
 大体、なんでわらわが人間ふぜいに愛想を蒔かねばならんのじゃ? え? 風角?」
「そうだ、そもそもヒョットコとは何事だ! 我々は鬼道衆だ! 面は般若と決まってる!」
周りに突き上げられ、リーダ格の男はおろおろした。どうやら、彼=風角が今回の計画の発案者のようだ。
「お前達、これまでに散々計画を失敗しまくって、反省はないのか?
 いくら九角様でも資金には限りがある。我々自身の手で活動費を稼ぎ報いることも必要だ!
 違うか? 少なくとも今回はワシの計画だ。言うことを聞く約束だろう。」
一同は神妙な顔して黙り込んだ。
(かなり違うと思うが・・・。普通は銀行襲ったりするだろう? なんでこいつらバイトしてるんだ???
 大体、ワシの計画ってことは、計画を持ち回りで作ってるのか???)
京一はあきれて緋勇を見たが、緋勇は直下を凝視したままだ。
(うんうん。自分のミスを自分でリカバリするのは立派な考えだ。でも、悪いことは悪いことだ。改心するならオレも手伝ってやるのに。)
緋勇は緋勇で、また別のことを考えていたようだ。
もう一人の仮面の男〜たぶん炎角〜は、ろくに答えもしないまま身体を揺すっている。どうやら、彼にはそういう地道な計画は性に合わないようだ。
一同の目線は、残りの一人である仮面の巨漢に向けられた。正しくは彼が抱えてきた大きな荷物にである。
「・・・おで、ちゃんどはだだいてきだ。こで・・・。」
「偉いぞ!」
「よくやった!」
皆の祝福の言葉の中、巨漢の差し出す包みをリーダがゆっくりと開くと、そこからはなにやら古くさい壺が出てきた。
「なんだこりゃ?」
「・・・おで、しごとしだ。ほうびもらっだ・・・。」
「これガラクタじゃないの?」
「中に何か入っているようだ。開けてみようぜ。」
リーダは、壺の口を塞いでいる布を引きちぎり、壺をひっくりかえした。と、中からじゃらじゃらと古銭らしきものが大量に出てきた。
「お、これは!?」
一同は一瞬目を輝かせたが、すぐそれは失望の声に変わった。
「わしらの時代の金ではないか! 現代では全然使えないではないか!
 おまえ、工事現場で見つかったガラクタをバイト代に押しつけられたな! バカ者!」 
全員の冷たい視線が向けられると、得意満面だった(といっても仮面の下の顔は見えないが)巨漢の態度が落胆に変わった。
「だからこんな計画はダメだと言ったんだ。次はオレが計画を立てる。こんな手緩いものではなく。もっと派手にやってやる。いいな!」
いままで黙り込んでいた炎角らしきヒョットコ男が、突然早口でまくし立て部屋を出ていった。
残された4名はすっかり黙り込み、やがて一人二人と去り、最後のリーダ〜風角〜も、溜息を一つつくと、壺と古銭を残し電気を消して去っていった。
「なんだったんだ? これ?」
京一は緋勇に目を向けたが、緋勇はまだ下の部屋を見つめている。
(そうか。彼らの次の計画を推測しているのだろう。残忍な炎角のことだ。どんな恐ろしい企みかもしれない。早く後を追わなくては。)
京一は我に帰った。しかし、緋勇の考えは違っていた。
(あの古銭、結構値打ちあると思うんだけどな。翡翠のところで見たのに似てるし。いらないなら欲しいなぁ・・・。ラーメン何杯ぐらいになるかなぁ。)
考え込む(?)緋勇をうながし、京一は外で待つ仲間達の元へと戻っていった。

2人が去ったあと、さらにもう一つの影があったことは2人も気付いていなかった。
「ふっ。鬼道衆の気配を感じて来てみたら、もうあいつらも来ていたのか。
 しかしそれにしても凄いお宝だ。こいつをもらわない手はない。
 これでうちの店にもいい品物がまた増えることになるな。」
そう言って、その影は下の部屋に降りると、残されたものを手にした。
「この色合いといい形といい、滅多にお目にかかれるものじゃない。見事だ。」
彼、如月翡翠は、古銭ではなく、それが入っていた壺をしみじみ眺めると、懐から取り出した風呂敷に包み、大事そうに抱えてその場を立ち去ったのだった。

2000/05/21 Release.

 …いやその…有り難うございますm(_ _)m。まさか本当に書いてくれるとはお釈迦様でもビックリです。アップする前に添削したなんてことはやっぱりみんなには内緒でも何でもないんだ(笑)。
だが「家事を振り捨て云々」って………ああ今日もカップラーメ…ごめんッ(だっ)
緋勇(そ、そうか…鬼道衆も苦労してたんだなあ。オレ、親の仕送りだけで食ってるの悪い気がしてきたよ)←本当にズレたコメントありがとねェ…(ぬるい目)