東京魔人「漢」学園 〜転校生〜

こばんっち

 あ……可愛らしいひーちゃんが好きな人と、筋肉質なひーちゃんが駄目な人は、読まないでやって下さい……(涙)


『第一話 転校生』(別名、H君の受難)

「皆も知っていると思うけど、今日は転校生を紹介するわ」

 マリア・アルカード教師が言う。
 教室中にざわめきが起こり、生徒同士が話し合う。
「ねぇ、男かな? 女かな?」
「男だって話よ」
「格好いい人だといいね(はあと)」
 しかしそんな中、蓬莱寺京一だけはあまり乗り気ではなかった。彼は、男には興味がないからである(当たり前だ。あったら怖いぞ)。
(あーあ、男かよ。どうせだったら可愛い子ちゃんがよかったぜ)
 可愛い子ちゃんというのは死語では? というツッコミは却下して、京一は扉を一瞥した。
「皆、静かに。それじゃあ、入ってきて」
 マリアの声に、皆が静寂する。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………

……地鳴り?)
 京一には聞こえていた。かすかな地鳴りが。

 ドスン……ドスン……ドスン……

…………ドスン!?)
 京一には分かっていた。その足音が、とてつもなく大きいことを。
 ……そして、京一は見てしまった。鳥たちが、この学園から逃げていくところを。
(俺たちのクラスは、一体どんな生物を出迎えようとしているんだ!?)
 額から汗が流れ落ちた。それは、冷たい汗だった。

 扉が開いた。

 がらがらがらぐしゃッ!!

 途中までは普通に開けていた。最後に、その生物の力に耐えられなくなったらしい扉が、音をたてて半壊した。生徒たちは、完膚無きまでに壊れた扉を見て、驚愕している。

 どがん!!

 そして、転校生と呼ばれる生物は姿を現した。
 扉が小さすぎて、生物は頭をぶつけたらしい。コンクリートの壁は壊れたが、生物はまったくの無傷だった。
「さ、自己紹介して」
 マリアが優しくうながす。京一は生物とマリアを見て、ディ○ニー映画、『美女と○獣』を思いだしたという。ともかく、生物はチョークを持った。

 べきん!

 折れた。
…………………………
 しばし生物は考え、今度は三本いっぺんに持った。

 べぐしゃ!!

 また折れた。
……………………………………
 生物はめげなかった。十本持とうとして、マリアに止められた。
「名前は私が書くから、あなたは挨拶して」
 うなづく生物。
 少し深呼吸したあと、生物は口を開いた。
……ワシは緋勇龍麻」
(ワシーーーーーーーーーー!!!???)
 声には出さず絶叫して、京一は生唾を飲んだ。
 落ち着かないと、殺られる。
 何故かそんな気がして、額の汗をぬぐう。

 生物……緋勇龍麻というらしいが、彼は身長200センチを越えていた。整った顔立ちだが、その顔を濃いと思わせてしまうのは、多分その筋肉のせいだろう。プロレスラーもびっくりな筋肉だった。
 そして、彼は長ランを着ていた。しかも、襟はバリバリ立っていた。
(20年前の不良か……?)
 思案する。龍麻は続けた。
「よろしくお願いするですたい」
(ですたいーーーーーーーー!!!???)
 あまりに不自然な博多弁に、京一は気絶しそうになるのをなんとかこらえた。肩で息をする。
(どうする……ヤツはXフ○イルに出てそうだぞ)
 京一は周りの生徒たちの反応を見た。皆、黙って龍麻を直視している。女性徒の一人が口を開いた。悲鳴をあげるのかと思った次の瞬間!!
「どこから来たんですかー!?」
 京一は心の中でちゃぶ台をかえした。実際には、机に顔をぶつけている。
「誕生日はー!?」
「血液型はー!?」
「前の学校ではなんて呼ばれてたのー!?」
 次々に起こる黄色い声。
 それに、低い声で答える龍麻。
……博多。9月23日。AB型。あだ名は……
 ぼそり、とつぶやく。

 「ひーちゃん、ですたい」

(ひーちゃん……あの筋肉で……ひーちゃん……
 筋肉は関係無いぞ。京一。
「ひーちゃん……
 女性徒が囁きあう。そして、皆一斉に叫んだ。

 『可愛いー!』

(俺……死んでいいかな……
 男子生徒も、「あいつ、結構いい奴そうだな」とか言っていた。
「みんな……ぜってぇおかしいぞ……
 京一が、机につっぷしながらつぶやいた。
 マリアがぱんぱん、と手を叩く。緋勇クンが困ってるじゃない、とかなんとか言っていたが、京一の耳には届かない。
「えっと……そうね、席は……美里さんの隣にしなさい。彼女クラス委員だから、いろいろ聞くといいわ」
「よろしくね、緋勇くん」
……………………
 龍麻は黙っていた。
(あいつ、照れてんのか?)
 こっそり眺めていたら、龍麻が突然立ち上がった。
「駄目ですたい」
「え………………?」
「男女七歳にして席同じにするべからず」
 ちょっと間違っているような気もするが、龍麻は美里から離れた。
……………………
(美里……惚れんな……
 頬を赤く染めている美里に、心の中でつっこむ。
「じゃあ……蓬莱寺クンの隣に座りなさい」
(何ィィィィィィィッ!?)
 それだけはやめろ、よしてくれ。
 と、言いたいが言えなかった。なんか筋肉に殺されそうだったからだ。

 ズシーン……ズシーン……

 龍麻は京一の隣の席に腰を下ろした。
 そして……猛烈に冷や汗をかいている京一に、『漢』らしい笑みを浮かべる。
「うぬはなかなか骨のありそうな漢じゃ、よろしく頼むぞ」
(うぬって言ってるよ、おい……
 ちなみに、「漢」と書いて「おとこ」と読む。
 京一は龍麻の座っている椅子がギシギシいっているのが気になりながら考えた。

 俺は、卒業するまで生きていられるのだろうか、と。


……ごめんなさい(謝)
 てか、これは続くのか……?(聞いてどうする、自分)