木刀

「…お前…もし俺が、これも飾っとけとか言って木刀にサインして置いたら、それも飾るのかよ?」
ええッ!? な、何でッ!?
うーん、そりゃあ元々オレは「お前みたいになりたい」と思って、心の中ではいっつもお前の軽いノリとか語り口とか練習してて、でも全然出来なくて毎日毎日挫折してんだもの。
サイン入り木刀…もらえたら、それこそ毎日拝んじゃうなあ。
 でも……

 オレは考えた末、首を横に振った。
だってよく考えたら、それじゃあ京一もコスモのメンバーみたいじゃないか。オレと違って、別にコスモなんか興味ないヤツの木刀を、飾るわけにはいかん! いくら八方美人なオレとはいえ、思想の違う宗教を二ついっぺんに信仰することは出来んのだ。なんたってオレ、コスモグリーン(かブルーか…しつこいゆーねん)だしな! ふははは!
 …あ…。京一がビックリしている。も、もしかして…怒った?
あ、あの…いや、やっぱ、オレ…

『…緋勇! また来週、こっちまでパトロールに来たら、今度はもっといいボールを持って来てやるよ!』
『お、俺っちだって、今度は新品のボールにサインしてやるぞ!!』
『もうッ! あんた達なんにも解ってないのね! …緋勇クン、今度は私、ちゃんとした色紙にサインしてあげるわねッ!』
こッ…コスモの皆さんッ!!!
すごいタイミングで…も、もしかして、それって一瞬挫けそうになったオレへのツッコミ? ツッコミなん!?
うわ〜流石はヒーローだ! 悪の道に入りかけたオレを、咄嗟に止めるとは…って誰が悪やねん。(ビシッと裏拳)
 オレは、思わぬ「ツッコミ」にニヤケつつ(勿論心の中でだ)、近いウチに増えるであろうコスモグッズに思いを馳せた。へへへ〜。色紙買っとこっと。どこで売ってるんだ? 文具屋さん? コンビニにはなかったっけ。スーパーにはないよな…いっそ駅の方まで行って、メチャメチャ派手な色紙とか買ってこよっかな〜。うわー楽しみー!!
 オレの内心に気付いてか、京一が何故かがっくりと肩を落としたけど、今日はもう気にしないことにした。…ごめんな、京一。