えびちよ
※ この作品はサーノの間幕・拾弐之弐「平和への賛歌」パロです(笑)
龍巳編:「弾道実験」
誤爆に気付いてそのまま固まってしまった京一。
そして──。
「…………ひ…ひーちゃん…。」
「……………。」
髪とシャツから水を滴らせて立ち止まっているのは誰あろう、緋勇龍巳であった。
じっと立ち尽くしたまま、長い前髪からしたたる水滴を見やって沈黙を守っている。
ややあって硬直したまま動けない京一にゆっくりと視線が向けられた。
龍巳の背後に立つ犬神は見た。京一の顔に浮かぶ死相を……。
「…緋勇」
制止は間に合わなかった。
「このど阿呆がぁぁぁ!!!!」
殺気に満ちた怒声とともに、龍巳の右拳が唸りを上げて京一に襲いかかった。犬神にさえ見きれなかったその拳は狙い違わず京一を捕らえ、その体を弾丸のように吹き飛ばした。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
窓枠をぶち破り、ドップラー効果と共に消えていった京一。
「………なぁ緋勇」
「何でしょう?先生」
背後からの問いに上半身ずぶぬれのままふり返る龍巳。その表情は先ほどの殺気が嘘のように爽やかであった。
「……ここは三階なんだが」
今更詮無い事と知りつつ思わず口にしてしまった犬神。
「大丈夫ですよ」
唇に笑みが浮かぶ。
「この角度であの勢いですからね、8割の確率でプールに落ちます」
尤も、風速や京一の途中姿勢は計算に入れてませんからもう少し確率は下がるかな、と、理数系に関しては美里を抑えてトップに立つ優秀な生徒は声を上げて笑った。
「……まぁ、おあいこってことか」
先ほどの確率に京一の悪運を加味して、犬神はそう結論付けた。
人、これを無責任と呼ぶ。
信剛編:「磯女の恐怖?」
誤爆に気付いてそのまま固まってしまった京一。
そして──。
「…………し…シン…。」
「……………。」
髪とシャツから水を滴らせて立ち止まっているのは誰あろう、龍見信剛であった。
「…………京ちゃん…?」
ゆらぁ、とその長身が近づいてくる。
「お、おぅ?」
謝ろうにもその異様な気迫に押されて言葉が出ない京一。
犬神は関わり合いになるのを避けて何ごとも無かったようにすたすたと歩き去って行く。
それを無責任と呼ぶ者は少なくともこの校内において存在しない。
「せ、先生、犬神先生!…さ、先ほどの授業のことで質問が!」
咄嗟に宿敵に救いを求めてしまう京一。哀愁を帯びた白衣の背に縋り付くように追いすがろうとする。が。
「…どこに行くのかなぁ?」
がしぃ!と冷たい手が肩を掴み、ぽたぽたと雫が首筋にかかった。
「シン!ごめん!わざとじゃねーんだぁ!」
「ごめんですんだら警察はいらないの!」
仕返しとばかりにずぶ濡れの巨大犬が負ぶさってきた。
「ぎゃぁぁ!冷てぇ!」
「それはこっちの台詞だい!」
背後から腰を掴んで圧し掛かってくる信剛から身を捩って逃れようとする京一。離すまいと抑え込む信剛。
必死の京一は、周囲の人だかりが何時の間にか違う意味で熱い視線を送る女生徒ばかりになっていたことや、
「うふふふふふ…………京一くんたら」
柱の影から響く裏密もかくやという怪しい笑い声に気付く事は無かった。
翌日、京一は学校を休んだがそれは風邪の所為ではなかったという……。
えびちよ: …すいません、師匠…。違う意味で遊んじゃった(−−;)。
サーノ: 全然構わんぞ、えびや。許す、どんどん行け!(笑)