<実験1>〜表現方法の相違によって主題はいかに変化するか

鮎川いきる

少女小説編

それを聞いた瞬間、目の前が真っ白くなった。
まるで天国にいるみたい。
だって……あたしが黄龍の器?
こんな、どこにでもいるような普通の女の子が!?
龍山先生には悪いけど、あたしにはとても信じられない。信じたくなないよ。
……けど。
先生から顔をそむけると、京一の横顔が目に入った。
いつもと全然違う、マジメな顔。
……そうだよね。逃げちゃいけないんだ。戦うんだ!
(ありがとね、京一……。)
あたしは心の中で、そうつぶやいた。
もし、勝てたらその時は。この想いを、伝えたい……


ジャンプ編

「何!?オラが黄龍の器だって!!!!」
「そうじゃぁぁぁぁぁッ!!龍麻、お前がぁぁぁ!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………
「うぉぉぉぉぉぉッ!!!チ、チカラが涌いてくるッ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ……
「ムダムダムダムダムダムダァッ!!!!」
「なにぃッ!?柳生ッなぜここに!!!!!」
「緋勇龍麻ぁぁぁ!!地獄に落ちろぉぉッ!!!!」
ズダダダダダダダダダダダダダァァッッ
「ぐおおおおおお!秘拳んッ、黄龍ゥゥッ!!!!!」
「うわああああぁぁぁぁぁぁァァッッッ!!!!!」


純文学編

 秋風に吹かれる髪もそのままに、彼は目の前の翁をみつめていた。好々爺という第一印象はすでにその面影を留めておらず、瞳の光はさらにその輝きを放ち少年を捕らえて離さない。後方で開かれた窓の向こうでは若竹がしなやかな裸体を晒して群生し葉々はその身を擦り合わせ囁くような悲鳴を上げるが、しかし彼の視界に入るのは巨大な竹林のほんの一部であり、また窓枠にきっちり収まっているため数分前に家屋の外側から目にした同じ物よりも遥かに見劣りする。だがその様な下等な立体絵画を背にしても老人の風格は衰える事無く彼や彼の親友たちに存在を主張するかの様に鎮座しており益々彼らは言葉を発する機会を失ってしまう。それから何分経過しただろうか、最早その場所では時間の概念すら消滅していたが遂に彼は覚悟を決めたのか一瞬頷く様な素振りを見せ重く閉じられていた口唇を開き震える声でこう言った。
「そんな……、僕が黄龍の器だなんて。」


作文編

そして、ぼくわおじいちゃんのいえに、いった。おじいちゃんは、ぼくがこうりゅうのうつわだといいました。とても、びっくりした。いえにかえると、よるごはんは、かれーだった。ぼくわ、かれーがだいすきなので、3ばいおかわりしました。とても、おいしかった。またたべたいです。


青年の主張編

驚くべき事に、彼は僕が黄龍の器だと言うのです!こんな不条理があってよいのでしょうか。僕には生きる道を選ぶ権利がないのです。そして僕の素晴らしい仲間たちもまた、僕という人間に関わったために宿星に縛られる事になってしまったのです。僕は一体どうやって償いをすればいいのでしょうか!僕は精一杯生きてゆきたい!仲間たちと共に、精一杯生きてゆきたい!(号泣)けれども宿星は、(号泣)僕たちが自由に生きるのを決して、(号泣)決して許してはくれません!(号泣)ああ!生きたい!自由に!(号泣)それが僕のたった一つの願いです!(号泣)


Eメール編

差出人…………ひーちゃん
おハロー。
今日は東京はすごくいい天気だったよ。
秋晴れっていいね(^s^)v
ところで昨日、知り合いのじーちゃんち行ったんだけど、
な、なんとオイラ、黄龍の器なんだってさー!(@o@)
しかも親がホントの親じゃないんだって(T_T)
もうびっくりしてアゴが外れちゃったよ(笑)
歯医者に行って治してもらわないとね(爆死)
けど黄龍の器って言ってもよく分からないしさ(^_^ゞ
ま、なんとかなるよね(汗)
ぢゃーオイラこれから風呂入るからさ、
あ、○○ちゃんも一緒に入る(笑)?
冗談×2、これじゃオヤジだね(自爆)。
じゃあまた明日(逃)!ばっははーい(死語)
でわでわ〜(^-^)/   ひーちゃんでした☆


テレビドラマ編

「龍麻よ。どうやらお前に本当の事を話す時が来たようじゃな……。」
「先生……俺は一体……。」
「うむ。お前はな、」
 ジュクジュクの水虫、つらいですよね。そんな時にはこれ!本庄正宗。水虫を”足ごと”断ち切るので再発する事はありません。カユミよさらば!
 24時間、だ〜い特価、如月骨董品店♪「邪妖、滅殺(にっこり)。」
「龍麻よ、どうやらお前に本当の事を話す時が来たようじゃな……。」
「先生……俺は一体……。」
「うむ。お前はな、黄龍の器なんじゃよ……。」
「そ、そんな!あんまりだ!」
<次回予告>
「ボク、やっぱり運命の二人には……かなわないのかなぁって……。」
「なぜじゃーっ、なぜあの岩戸を閉めたんじゃぁーッ!」
「アニキ……ワイの話、聞いてくれるか?」
「緋勇龍麻よ……這い上がって来い、ここへ……。」
 この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。
提供   如月骨董品店   黒崎商店
「私、あなたの事が……。」
 この後は、ニュース・ザ・ニッポン!
 セクハラを認める法案がついに可決されました。


ミステリ編

「そして、黄龍の器はこの中にいる!」
 白蛾翁は確信を持った声で、振り向き様にそう言った。
「なんだって!?」
 その場にいた全員が、互いの顔を見合わせて凍り付く。
「ああ。弦麻の子供であり黄龍の宿星を背負った陽の器……それはお前じゃ、龍麻!」
「なんだと!?ふざけるのもいい加減にしろ!そこまで言うんだったら証拠はあるんだろうな、証拠を見せてみろ証拠をよぉ」
「むぅ。ここに名前を書いてみなされ」
 龍麻は差し出された紙とペンを奪うようにして受け取り、”緋勇龍麻”と書きなぐった。
「これで何が分かるってんだ?」
「ふぉっふぉっふぉ、おぬし今、右手で書きおったな?」
「し、しまった!」
「警部殿、あとは頼みますぞ。ふぉふぉ。」


鮎川いきる編

エロすぎてここには載せられませんでした。

実験終了