サーノ
「───どうも、卿の言うことは要領を得んな。」
今まで伏せられていた、凍てつく星のような瞳を上げて、龍麻は呟いた。
その鋭い視線に内心動揺しながらも、顔に出しては小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、龍山は続ける。
「なんと、閣下ほどの方がお分かりにならぬとは思えませぬな。<<黄龍の器>>とは、そのような小人ではない、と認識しておりましたが。いや、これは買いかぶりでしたか。」
名匠の手によって造り出された彫刻を思わせる、冷たい容貌に戸惑いの色を浮かべ、龍麻は側に控えた赤毛の青年に問うた。
「…どう思う、京一。」
ルビー色の髪を持つその若者は、人好きのする笑みを浮かべて答える。
「龍麻様は、この銀河を治める<<力>>をお持ちだと───そう、聞こえました。」
凍てつく蒼が、燃える赤を捉える。
「宇宙を、手にお入れ下さい。龍麻様。」
「京一…。」
ごく一部の、親しき者にしか見せない笑顔を、その冴え冴えとした貌に浮かべる。
───所詮、俺達は京一の下でしかないのだ───
誇らしげに頷く小蒔を、その黒い右目で捉えながら、醍醐は一人自らの考えに没していた。
「真神の双璧」と謳われる我々が、ここに存在する理由はなんだ?
左に輝く金の瞳が、苛立たしい色を浮かべる。
その様子を美里が見逃す筈もなかった。
かくて、内紛の種は蒔かれたり。
酷薄な笑みを口の端に浮かべ、美里は成り行きを見守るのだった。
続く
「キミがそうダ、って言ってるんだヨ、ひーちゃん」
うそっ…あたし?
そんなの、急に言われたって。うそ、でしょ? ジョーダン、キツイってバ。
「ひーちゃん、信じないの? 俺の言うコト」
きゃっ。
急に手を握られチャッタ。DOKIッとしちゃうじゃない、ヤダ、龍ちゃん。
なんでミンナ、そんなマジなのお? ねえ、黄龍ってナニ? あたし、DOKI☆DOKIして全然分かんナイ。
「ひーちゃんっ」
やん。マジ☆なカオ、似合わないもん。きょーいち、そんなカオしちゃヤダっ!
「ね、ちゃんと聞こ? ダイジなコト、だよ? ひーちゃんっ」
こまきまでー。ふええん。
だって、だって、なんかコワイよう☆ ニラんじゃ、やっ。
そうダ、葵ちゃんっ。葵ちゃんなら、分かってくれるヨね?
「…龍麻。逃げちゃダメだよ。ね。アタシたち、一緒にいるからっ。」
そんなぁ。葵…。だって、アタシ、ふつーのコーコーセーだったじゃないっ。
to be continued?
…暖炉にかけられた、土鍋が、しゅうしゅうと音を立てていたわけで。
「…うまく、言えないんだがな。龍麻。」
「……」
「おれぁ、…黄龍のウツワ、ってヤツをよ。…信じてぇんだよ。」
しゅうしゅうと、土鍋の煮える音が、響いていたわけで。
「…ひーちゃん。」
京一が、ちょっと困ったカオで、僕をみつめたわけで。
父さん^H^H^H龍山さんの話は分かったけど。
土鍋が、音を立てて、煮えていたわけで。
僕は、どうしていいか分からなく、立ちつくしていたわけで。
続…なわけで。
実験終了