結果

「頑張れ、だってよ、が・ん・ば・れ~っ!!」
「お前が言うなあっ!耳から余韻が消えるうううっ!!」
「俺はあの猫になりてえええっっ!!」

盛大に喚く部員たちを傍らに、原田は一人、ラーメン屋「王華」夏季限定メニュー・「特製冷やし中華」をすすっていた。
美味い。確かに美味いが、「79年真神卒業生一同」だの「おばちゃん長生きしろよ」などと書かれた壁と我が身を振り返り、いよいよため息が深くなる。
・・・つくづく平凡だ。
校門前に大きくせり出した桜の木の影、木漏れ日の中からかけられた声。
「頑張れよ」、短い言葉にこめられたであろうものの重さは。
つい先日、体育の授業で見せたあの妙技(「魔人の星」の直後にございます)といい、それでいて小中高、一度も名前を聞いたことがなかったことといい。
きっと、自分自身を犠牲にしなければならなかったに違いない。

「野球だと?そんなことのために我が社の未来を袖にする気かっ」
「若君、あなたは跡取りなのですから・・・どうか御辛抱を」
「事故ですって・・・あのままいけばきっと、立派な選手になったでしょうに」
「君は凡人とは違う。我々が施した肉体改造こそ、世界を支配するに足る技術だ」
「ともに世界征服に向けて組織を作ろうではないか!!」

全身タイツの戦闘員たちが「ジークヒユウ!!」「ジークヒユウ!!」と叫び出す。
そんな自分の夢想に苦笑した原田の背に、だが後輩たちの声がかけられた。

「原田センパイ、緋勇さんのこともっと教えてもらえないッスか?」
「お願いしますよ~、趣味とか、好きな食べものとかっ」

見事に冷やし中華に顔を突っ込んだ原田は、ここに決意する。
龍麻の果たし切れなかった夢を、自分たちがかなえようと。
そしてそのために、龍麻の名を存分に使わせてもらおうと。

「・・・教えてもいいが、代わりに条件がある・・・」
『何でも言って下さい!!』

「・・・・・・甲子園の優勝旗だ・・・・・・・・・」

果たして、どうなることやら。