京一の過ち

 一度だけ、間近に視たことがあった。
あの時は酔っていたし、ほんの一瞬の出来事だったので、夢の中の出来事かとすら思っていた。
 だが、今───
両眼の輝きは、龍麻の整った容貌に相俟って、壮絶なまでに京一を圧倒した。
目を離せない。
今、龍麻が何かを命ずれば、どんなことでも言われるまま行動するだろう。
馬鹿なことだ。ちょっと見つめられた程度で、ひれ伏す程に惹かれるなど…
 惹かれる!?
違う、俺はただ…!

 混乱する京一を尻目に、龍麻はあっさりと立ち去った。
「オレの目は、他人には怖いらしい」
龍麻の言葉を反芻する。
確かに恐怖と言っても良いだろう。それ程までに強烈な引力を放っているのだから。
 しかし。
それを龍麻自身はどう思っているのだろうか。厭わしい、と思っているのではないか?
表情には何も現れていない。だが、伏せられた瞼は、握りしめられた拳は、何よりも雄弁に物語っていた。
「くくッ…はっはっはっは!」
 何を思ったのか、醍醐が笑い出した。
笑い事じゃねェだろッ!?
そう怒鳴りかけて、それどころじゃないことを思い出し、慌てて龍麻の後を追う。
 冗談じゃねェよ。これじゃ、俺も龍麻の眼に怯えた連中と一緒ってことじゃねェか。
たかが眼の一つや二つ、自分達は、少なくとも自分は何でもない。怯えたんじゃないと分からせたかった。