如月と京一の会話

「…はい、如月です。」
「…ああ、俺だ。ちょっと訊きたいことがあんだけど。」
「は? …どちら様ですか?(分かってるけど)」
「…蓬莱寺だッ。声で判断くらい出来ねェのかよッ骨董屋!」
「ああ、君か。判断できるほど親しくなった覚えはないんだが…で、何の用だい?」
「くっ…(ムカつく…こんなヤツに何で…)…そっちに、ひーちゃん行ってねェか!」
「緋勇君? …どうして? 何か彼に用があるのか?」
「用ってんじゃねェけど…最近、旧校舎寄った帰りはお前んとこ寄ってるって聞いたからよ。で、いるのか? いねェのか?」
「そのことか…僕も一度聞こうと思っていたんだよ。君が首謀者なんだろう? 旧校舎での鍛錬は。」
「…? それが何だ?」
「あまり『龍麻』(ちょっと強調して)に無理をさせるものじゃない。どうも、彼の様子からすると、好きで旧校舎に付き合ってるわけじゃなさそうじゃないか。」
「…それ、ひーちゃんがお前に言ったのか?」
「言わなくても分かるさ、そのくらい。尤も、君は鈍…失礼、少し疎いようだから、分からないんだろうけどね。」
「てッ…てめェ…てめェに何が分かるッてんだよ!」
「君よりは色々と、ね。…彼は、君が思っているほど闘いを望んでいないよ。ウチで買っていく品は殆ど回復薬で、攻撃用の商品には手を出さない。武器も興味がないみたいだし。」
「だ、だけど、ひーちゃんはいつも率先して…!」
「闘いになればね。彼は仲間の安全を常に考えているから、自らを盾にするように闘うけれど、それに甘えていては彼を傷つけるばかりじゃないか?」
…………。」
「…そういうことだから。じゃあ、切るよ。…ちなみに、『龍麻』(また強調)は今ウチにいるけれど、どうする? 電話に出すかい?」
「…ああ……いや。…すぐ帰るんだろ?」
「食事をしていってもらうことにしたから、まだいるよ。」
「メシだあッ!? …ちっ…今からそっちに行くからな! 鍵空けて待ってやがれッ! …ひーちゃんに、よけーなこと言うんじゃねーぞッ。」

 僕は電話を切ると、蓬莱寺の望み通り、店の出入り口の鍵を開け、そして龍麻には何も言わなかった。
…全く蓬莱寺、彼ほどからかって面白い人間はいない。
彼がそこまで惚れ込んでいる、緋勇龍麻の魅力は僕にも分かる。しかし…あそこまで顔に出るのも珍しい。
緋勇が全く顔に出さないので、そのコントラストが実に可笑しいのだ。
 これは、僕が他人と関わっているのではない。他人「で」遊んでいるだけだ。
言い訳に過ぎないことを思いながらも、どういう風にからかってやろうかと考えている。
そんな自分に苦笑しつつ、僕は台所へと戻った…。