二番だし
・・・あー、今日も機嫌悪そうだなぁ。
こっちに歩いてるって事は今日も泊ってく訳だよな。
・・・嬉しいけど、ちょっと・・・いや、すごく怖い。
こっち向いてもくれないや。
そりゃ、俺に話しかけてもロクに返事も出来ないから面白くないだろうけど、前は色々言ってくれたのにな。
さやかちゃんの話とか霧島のこととか・・・。
あ、痛。
・・・?何だ?いきなり胸が痛くなったぞ。肋間神経痛か・・・?
すーはー・・・深呼吸しても別に痛くないな。気のせいか?
えーっと、何考えてたんだっけ、あ、そうそうさやかちゃんと霧島のことだ。そういや、最後に京一が笑ってくれたのはさやかちゃんの新しいCDの話だった・・・。
イテ!・・・また痛い。なんやねん、一体!?・・・って、今のちょっと劉っぽかった?なんか関西系芸人っぽかったかな?
・・・ふぅ、最近心漫才まで不調だ。
京一のことばっか考えてるからかな・・・。
人に嫌われるのには慣れっこだったはずなのにな。
やっぱり好きな奴に嫌われてるってのは特別、心が痛い。
はっ!・・・いかん、いかん!しっかりしろオレ!!決めたんじゃないか、京一がオレの事嫌いでストレス解消の対象でも何でも、ちょっとでも好きに・・・いや、捨てられないでいられるように努力しようって!
だから、今日も頑張るんだ。・・・あんなこととかこんなこととかされたりさせられてもだ。
・・・うぅ、でも何だか努力する度に京一の機嫌が悪くなっていくのは何故なんだろう。オレ、そんなに進歩ないかなぁ?とはいえ、他に教えてくれる人も居ないから京一のするようにする以外、解らないんだからさ、もうちょっと我慢して欲しい・・・。
はっ、いかん!もしかしてそういう他力本願なことを考えるからいかんのか!?っちゅーか、【他力本願】ってこんな時に使っちゃいけない言葉だったな。じゃ、何てゆーんだ?・・・えーっとえーっと・・・。
ぶっ!
急に立ち止まるなよ、京一。鼻ぶつかったじゃないか。
・・・いえ、ぼーっと歩いてたオレが悪かったね、ごめん。
どしたんだ?空なんか見て・・・・・・あ!
雪だ!雪だ!!わーい、東京来て初めて見る雪だ~~~。
うわぁ・・・久し振りだなぁ、雪見るの・・・。
あわわっ!急に引っ張るな、京・・・!?
ち、ち、ち、ちょっと待て、京一!?
こ、こ、こ、ここは公道だぞ!?公の道と書いて公道だ!つまりみんなの道なんだ!・・・誰が通るか解らない道の真中で「大人のキス」はやめろ~~!
く、苦しい、息が出来ない。肋骨が折れる・・・。
いや、口を開いたのは息がしたかったからであって何も舌を入れてきて欲しかった訳じゃ無いの。
とほほ・・・。東京の人って雪を見るとキスしたくなるのか?何かドラマの見過ぎって感じだ。いくらチャンネル数が豊富ったってなぁ・・・。
んあ?何か温かいもんが落ちてきた。雪は冷たいから、雪じゃないよな。
・・・おぉう!?やっとキスが終わったら今度は肩で窒息させる気か!?
苦しい、苦しいってば~。
・・・え?京一・・・まさか・・・お前・・・?
「・・・龍麻・・・」
・・・京一、泣いて、るの、か・・・?
何で、いきなり・・・。
はっ!そうか、京一は何か雪に嫌な想い出があるんだな!
いきなりこんな風に泣くんだからよっぽどの事だ。そう、例えば誰かに振られたとか・・・。
いや、男、それも京一がそんな位で泣く訳が無いな。
・・・京一が泣くんだ、余程の事だ・・・。
「・・・きょう、いち・・・」
何があったんだ?何がお前をそんなに苦しめてるんだ?
聞きたいのに、抱きしめる腕が強すぎて、息を継ぐことさえ満足に出来ない。
オレなんかに話せることじゃないのは解ってる。それでも、オレはお前の為に何かしたい。お前を苦しめるものに一緒に立ち向かっていきたい。
・・・そう、告げることもできないんだ。オレ。
せめてもの気持ちを込めて、京一を抱きしめてみる。
オレは、京一に抱きしめられている時が一番幸せだから。せめてその数百分の一でも、お前がオレに抱きしめられる事で幸せになって欲しい・・・。
・・・オレは、ずっとお前の側に居たいんだ・・・。
◇ 終 ◇
09/30/1999 Release.