花葬

二番だし

gravity is on the increase as a time goes by
my body returns to the earth
there is sky up in the air
my body is in your sky and your life is in my cosmos
we never come close to each other
but here we exis as it is …………

 浅い眠りは容易く解けて。
 夜明け前の闇に沈むベッドの上で一人身を起こす。
 傍らから聞こえる規則正しい寝息。
 そっと触れて髪に指を絡める。
 悪戯に軽く引っ張ってみても目覚める気配は見え無い。
 ゆっくりと閉じた瞼、通った鼻筋、僅かに開いた唇を指でなぞる。
 かすかにかかる暖かな寝息。
 夜に隠された人形のような青年が生きているものだという確かな証。
 そっと身を屈めて軽く口接けてみる。
 微かな身じろぎ一つだけで、やはり目覚める気配もみせない。
 ゆっくりと頭をもたげる暗い情念。
 闇の中でもしかしたら自分の目は光っているかもしれない。
 愛しげに頬を撫でるその手を、無防備な首筋にゆっくりと移す。
 確かな脈動が掌を通じて伝わってくる。暖かな体温と共に。

 失いたく無いと願って止まないこの存在は初めからこの手の中に納まってなどいなかった。
 水に浮かぶ月を掬う事は出来ず、吹いてゆく風を留めることも出来ない。
 同じように彼の心を捉える事など誰にも出来ないのか。
 ただ、空っぽの肉体だけを汚しつづけて確かめる。
 彼が、そこに存在しているということを。
 自分がここに存在しているということを。
 
 それは死に臨んでも果たして変わる事はないのだろうか……

 このまま、力を込めれば全てが終わる。
 この明けない夜に終止符が打てる。
 憎しみも哀しみも愛しさも全て道連れに終わらせることができる。

 けれど。
 もしもその前に彼が目覚めれば?
 自分が彼をを殺そうとしているのだと知った瞬間、あの底の無い暗い瞳で見上げられたら?
 どれだけ愛をぶつけても、憎しみをぶつけても、変わる事の無い冷たい双眸で。
 ぞくりと、言い知れぬ恐怖が全身を凍り付かせる。

 力を込める事も、放す事もできないまま夜に向かって問いかける。
「なぁ…お前にとって俺は何だ?お前にとってもお前って何なんだ…?」
 彼は誰も愛していない…自分自身さえも。
「答えてくれよ……ひーちゃん……

 ただ暗い情念のままに流されゆくばかり……

11/26/1999 Release.