オレ様に言わせりゃア、あの京一なんかはメじゃねェワケよ。
初めて出会ったとき、既にオレ様は、ちょっとシビレちまってたンだからな。
何がイイって、声だよ。声。
ドスがきいてるってンでもないし、キンキン響くってンでもない。
なンてのかな、こう、腹の辺りの空気がさ、ビリビリ共鳴してさ。
イカすバイブレーションなンだよな。
一回歌わせてみてェよな。そういうガラじゃなさそうだがな。
だけどよ、イカす声してる割にゃあ、全ッ然喋ンねえ。
京一が10倍くらい喋ってっから、うるさくてしょーがねえ。
くだらねえジョーク飛ばしといて、慌てて謝ってやがるし。ダセェ。
でも、そーゆーナンかが、あの人にはあるンだよな。
こう…キラわれたくねえ、って思っちまう、ナンかがな。
完璧ホレたなって思ったのは、唐栖との闘いの最中だ。
熱くなって飛びかかろうとしたオレ様を、たった一言で動けなくしちまいやがったンだぜ。
─── 違うッ! 雨紋! ───
あれは、そうだなァ。例えるなら、ライトハンドでハンプリキメた感じだ。
分からねェって? このオレ様が、シビレちまうような響きってコトよ。
一瞬、曲が出来ちまったもンな。
どんなのかって? 聞きてェのか? 仕方ねェな、今日は気分がいいから歌ってやってもイイぜ。
アー。アー。
Cm7〜F B7〜…
(長いので割愛)
…って、おい! 何ハショってやがンだよッ!
ま、オレ様の美声を文章で語ろうってのア、土台無理な話ではあるけどな。
…で、何の話だっけ?
ああ、そうそう、センパイの話だよな。
そう…。ビシッとキメられてよ、凄ェッと思ってよ。
それでも唐栖のヤロウはオレ様の手で倒したかったから、抗議してやろうと思って睨んだンだよ。
だけどさ…。
お前、知ってるか? あの人さ、普段と闘ってるときと、全然違うぜ?
何がって、目がさ。もう全然目が、迫力あって凄ェのよ。分かる?
オレ様渋谷では、自慢じゃねェけど勝てないヤツなンていないワケよ。
でもあの人には勝てねェだろうな。マジでよ。
タイマンはっても、ビビッちまうかも知ンねェ…。この、オレ様がだぜ。笑うよな?
そんでさ、あの京一もアゴで使われててよ。みんな、あの人の命じるまンまに動いててよ。
ダセェだろ?
でもよ、オレ様もなンだぜ。あの人にさ、
「雨紋ッ! 今だ!」(声真似。全然似ておらず)
って叫ばれてよ。
凄ェ、力が腹の底から湧いてくるみてェな感じがすンだよ。マジで。
で、このオレ様が、唐栖のヤツにとどめを差したッてワケだ。
オレ様がそうしたいって思ってたの、あの人分かってたのかなァ。
分かってたかも知ンねェな。あの人だもんなあ。
ッは〜〜ッ。カッッッッコイイよなあ。マジでイケてるぜ。
クールでよ。ルックスもイケててよ。なんたって声がシブくてよ! へへッ。
───何イ? 気持ち悪い? ヘンタイ?
ばっ、オレ様はだなあ! そういうダセェ事で言ってんじゃねェンだよッ!!
こないだ、バンドの練習に行く途中で、メチャクチャ気持ち悪くなってよ。
二日酔いに似てるかなッて最初思って、その後、唐栖のヤツの<<気>>に似てるのに気付いたンだよ。
どっから感じるのか、辺りを探してたら、紫暮ってヤツにばったり会って。ああ、紫暮ってのも「仲間」なンだけどな。
それで、二人で探し当てたらよ、ボロッちい建物の中で闘ってたンだよな。
少ねェ人数でナニやってンだよ、ケータイの番号教えたろッ! とか文句言ってやろうと思ったら、あの人がひっでえ格好でさあ。
ナニされてたンだろうな、体中にテープとか変なコードとかくっつけられてよ、ふらふらしてンのよ。
顔色も悪リィし、あの人にしちゃ、動きが重いし、オレ様が駆けつけなかったらどうなってたかねェ、アイツら。ヘヘヘッ。
それでよ、あの人をとりあえず京一のヤツから引き離してよ。イロイロくっついてるもん全部引っ剥がしてやったのよ。
コードなんかブチブチ抜けて、血も出たりして、ちっと痛かったかも知ンねェけど。ま、あの人カオに出ねェからな。
そんで、オレ様のことなンか気にもしないで、京一のヤツに命令してンだよ、もう動くのもしんどいって雰囲気なのに。
ッは───。クールだよなァ。たまんねェよ。
マジで、歌ってみてくンねェかなあ。ウチのボーカル捨てるからよ。いや、ジョーダンだって。
そン時の闘いは…良く事情は分かンなかったんだがよ。女が一人、死んだンだよな。
なんか、あの人のカノジョだったのかもな。周りの連中の態度からするとよ。
次の日に、やっぱ気になっちまってよ、真神に行ったはいいんだけど、何も言えねェよな、良く考えたら。
で、しょーがないから「元気出せよ」なんてダセェこと言ったンだけどよ。
…やっぱ、クールなンだよなァ、あの人。何にも言わないで、ちょっと頷いてさ。
カノジョが死んだンだろ? お前ならどうよ?
「オレ様がついてるからな」ッて言ってやったら、
「ああ。」(またも声真似。益々似ておらず)って、こうシブーくキメられて、もうオレ様ゾッコンってワケよ。
だから、オレ様は決めたのさ。あの人について行こうってな。
あのバカ(京一のことであろう)には任せてらンねェのよ。なんたってバカだからな。
そういうワケで、今日もまたパトロールよ。ケータイに連絡入るの待っててもツマンネェからな。
ナンだよ、オレ様もバカみてェだって言うのか? へッ、アンタもいっぺん、あの人に…龍麻サンに命令されりゃア分かるって。
マジでシビレちまうぜ。ハートが、さ。
06/08/1999 Release.