拾四
之壱

醍醐の憂鬱 IV

 京一が驚くべき提案をもちかけてきたのは、修学旅行を明日に控えた昼下がりだった。
「ちッとあの二人の後押しをしてやんねェか?」
二人とは、美里と…龍麻。この二人をデートさせてやろうと言うのだ。

 ほんの数日前のことだった。
龍麻にちょっとした忠告をしようと、紫暮と二人で話し合って呼び出したのは。
出がけに急用が出来て、遅れてしまった俺が見たものは、ベッドに身を横たえた龍麻と、その上に覆い被さるようにして…その、何だ…何かを…し、していた、紫暮の姿だった…。
 何がどうなってそういう状況になったのかは解らない。紫暮に訊くわけにもいかず、俺は悩みに悩んだ。
そして、絶対に確かめねばならないことはただ一つであるという結論に達した。
 それは…

 龍麻本人は、実際には誰に好意を持っているのか? ということだ。

 紫暮とは…いや、あれは何かの間違いだ。紫暮ほどの男が、いくら龍麻に魅力を感じたからといって、じ、実力行使であのような真似をするとは思えない。勿論、龍麻も同意したとか、龍麻からさ、誘ったとか…うッ……
 …いや落ち着け、醍醐雄矢。だからこそ、龍麻の気持ちを確認しなければならないのだ。
奴とて立派な武道家だ、そうそう道に外れた行いを、遊びで行うとは思えない。…恐らく。
どう切り出していいか検討もつかなかったが、とにかくそれを確かめねば、京一を諫めるべきか応援すべきか…い、いや、とりあえず遠くから見守るべきか、解らない。
 そんな決心をした矢先だったのだ。

「…醍醐、お前は?」
 我に返った俺は、とりあえず了承した。
以前にも、美里との仲を応援すると言っていたが、本気だったらしい。
 龍麻は本当に、美里に気があるのだろうか。
京一と違って、俺には龍麻の気持ちはあまり解らない。ただ、龍麻のちょっとした仕草が、ある程度ストレートに感情表現をしているということが、最近解ってきた。
小首を傾げたときは迷っている。両手を握りしめたときは困っている。そんな程度なら、俺にもようやく解るようになったのだ。
しかし…。
 大雑把な相談が済み、屋上から教室へ戻る途中、俺は京一を引き留めて尋ねてみた。
「なあ…。龍麻が美里に、その…好意を持っているというのは、本当なのか?」
「…? ああ、まァな。俺の目に狂いはねェよ。」
……だ、だが…。」
龍麻が美里をずっと見つめているとか、なるべく側にいようとしているとか、そういった姿勢は全く見えない。勿論、恋を隠そうとしているのであれば、こんな態度はとらないとは思うが。
(どちらかと言えば、龍麻はいつもお前をこそ見ているような気がするんだが…)
と言いかけて、俺は言葉を飲み込んだ。
そう告げてしまった時の京一の反応が、恐ろしかったのだ…。

 京一の計画は、はっきり言ってずさんを極めた。
入らない筈の邪魔が入り、桜井がまず遠野を遠ざける羽目になった。
そして…
 「甘美な罠」の正体を教えて欲しいかと、裏密が龍麻に笑いかけている。
このままでは、裏密の口から全てがバラされてしまうだろう。万事休す、といった風体で、京一が頭を抱えている。
「…教えろ。」
そう言って裏密を見つめる龍麻を見て、俺は咄嗟に決意した。

「うふふ〜。醍醐ク〜ン、ここに〜座ってね〜。」
………。」
 オカルトだの幽霊だのの類は苦手である。だから、この霊研の雰囲気は辛いものがあるのだが、それだけでこれ程身体が勝手に震えてしまうのも、情け無い話だ。
いや、雰囲気だけではなく、どうにもこの部屋には、こう、何か得体の知れない気配が…
悲鳴を上げて逃げたがる身体を必死で抑える。
「さあ〜、醍醐ク〜ンは、何を占いたいの〜?」
……………あ〜…その…た…いや、友人のことを……。」
「お友達〜? …どんなことを〜知りたいの〜?」
「つ、つ、つまり…その…お、俺の友人が、一体誰に好意を持っているかを…」
……うふふふ〜。その友人って〜、桜井ちゃァんのこと〜?」
「ぶほッ! ごほッ、ごほッ!」
思わず知らず、顔が熱くなる。くそ、どうして京一といい裏密といい、そうやって桜井の名を出してくるんだ?
「具体的に〜、名前を出して〜くれないと〜、ミサちゃん占えない〜。」
「…い、いや、しかし……
………………。」
……
……………………。」
 うう…ッ。身体中から嫌な汗が流れる。
龍麻のことだ、と言いかけたとき、先に裏密の方が口を開いた。
……いいわ〜。醍醐ク〜ンなら〜、上手く視えるかも〜。」
……は?」
「これを見て〜。」
 裏密は、水晶玉らしきものを取り出して、机の上にそっと置いた。
「醍醐ク〜ンは〜、霊感が強いから〜。」
………。」
「い〜い〜? その人のことを〜、強く考えて〜。ミサちゃんに、イメージさせて〜。」
裏密の、小さくて冷たい手が、俺の両手の上に被さる。
そこから何やら寒気が伝わってきて、思わず手を退きたくなってしまう。
「大事なお友達なら〜。集中してねえ〜。」
……ッ。
 そうだ。ここで逃げてはいけない。
龍麻と京一、二人の大切な友人のためだ。この二人の気持ちがすれ違って、結局不幸な道を辿ることがないように。出来れば、二人とも幸せになるように。
そのために、龍麻の真意を知りたいのだ。
教えてくれ…
 龍麻、お前は誰か、心を動かされている人物が本当にいるのか…?!

 霊研の外に出ると、太陽がやたらと眩しく感じる。
何だか地底から外に出たような気分だ。
俺は、ふらつく足を何とか前に運んで、階下に降りた。とにかく、龍麻と美里に追いつかねばなるまい。
 と、下駄箱に背を預けて佇んでいる友の姿を見つけた。
ふらつきながら近づくと、俺に気付かない程何か考え込んでいたのだろう。溜息混じりに呟くのが聞こえた。
「…ッたく…どうしたらいいんだろうなァ。」
 …………
京一…。
 道ならぬ恋に、人知れず悩んでいたのか。
何だかお前の態度は、あからさまに龍麻にアタックしているように見えたんだが、きっと無意識だったんだな。
そして今は自分の気持ちに気付いて、忘れようと努力をしているのだろう。
だが…。
 声をかけると、苦渋に満ちていた表情が嘘のように消え去り、いつものニヤニヤ笑いを顔にのぼせて、「さ、追いかけようぜ」と楽しそうに言ってみせた。
 お前はいつもそうだな…。
本当は色々迷ったり考えたりしていても、俺を励ますためにわざと何も考えていないふりをしたり、明るく振る舞ったりしている。
きっと龍麻に対しても、そうやって自分の気持ちを隠して、強がって見せているんだろう。
 だがな、京一…。
もし…もしも、お前の気持ちが一方通行でないとしたら、お前は、お前達は一体、どこへ行ってしまうのだろうか…。

───陽のプラーナをまといし〜、剣の使い手〜。明るい髪〜、強き意志〜。鋭き刀光〜……が、視えるわ〜…。」
 俺の知る限り、その表現に見合う人間は一人しかいない。
……気を〜、落とさないでね〜。乙女の心は〜運命の輪と星に翻弄され〜、変わっていくものよ〜。」
裏密は、占った相手を桜井だと思ったらしく、俺を慰めてくれた。彼女にも、そんな一面があることを知り、ほんの少し見直したのだが…。

 俺は…どうするべきだろう。
このことを告げてしまって良いのだろうか。
悩み続ける親友の姿を見たくはないが、想いが通じ合うことが、二人にとって本当に最善の道なのだろうか。

 翌日、決意が付けられぬまま、新幹線に乗り込んだ。
そして今、目の前には恐ろしい光景が広がっている。
またしても遅刻ぎりぎりでやって来て、列車に飛び乗ってきた京一。
京一のためにドアの閉まるのを抑え、飛び込んできた身体をそっと包むようにして引き入れた龍麻。
ホッとしたように身体を預けている京一と、その肩を抱いて離さない龍麻が、一瞬見つめ合う。
 しかし次の瞬間には、京一は何事もなかったように、客席へと歩いていってしまった。
その背を見つめる龍麻は相変わらず無表情だったが、事情を知ってしまったせいか、必死で気持ちを隠そうとしているように見えてしまう。
胃がずきずきと痛んできて、俺も慌てて席に向かった。何だか龍麻を見ていられなかったのだ。
『列車へ飛び乗ったり、扉を抑えたりする行為は大変危険です。運転が遅れ、他のお客様のご迷惑になりますので、決してなさらないよう、お願い致します』
 車掌による臨時アナウンスに、益々胃が痛む。

 峠の茶屋では、ぼんやり龍麻を見つめる京一にハラハラしたが、その後それに気付かず食いかけた団子を京一に渡し、美味そうに食うのをじっと見つめる龍麻にも胃が痛む思いだった。やはりこの二人は、互いに想い合いつつも隠し合い、完全にすれ違っているようにみえる。
解ってみると、山道を歩いている間も、食事の際も、互いが相手に気付かれぬよう様子を伺ったり、慌てて目を逸らしたりしている。はたから見ていると実に心臓に悪い。
 疲れ果てた俺は、ぐったりとしながら身体を湯に沈めた。
「ふうッ…」
格別に風呂好きというわけではないが、やはり広々とした温泉とは良いものだ。心も身体もリラックスしていく。
「ふィーッ。やっぱ温泉は、疲れがとれるねェ。」
 年寄りじみたことを言いながら、京一が隣にやって来た。
龍麻の方は、さっきから少し離れたところに陣取って、ゆっくりと湯に浸かっている。
時々片手で湯を掬い上げ、さらさらと零す。
無意識かと思われたが、伏せ気味の睫毛が微かに上下しているのが見えた。
 …動体視力を鍛えているのか?
思わず感心して京一に告げようとした瞬間、俺は固まってしまった。
京一は、とっくに龍麻を見つめていた。…それも、やけに切なげに。


 た、確かに、湯気の向こうにけむる龍麻の黒髪と白い肌は美しく見えないこともないかも知れない。長い睫や、珍しく上気した頬が、色っぽく見えないこともないかも知れないような気もしないではない。普段通りの無表情が、妙に憂いを帯びて切なげに見えなくもなくは…
いかん。俺までおかしな考えに染まってどうする。
 京一と龍麻の間に入ろうとし、この異様な雰囲気に気付いてそっと逃げ出した級友の姿を見て、俺は突然目眩を覚えた。
……京一…。頼む…頼むから、人前では…人前では止めてくれ…」
京一が我に返ってくれなければ、俺はそのまま溺れていたかも知れない。

 身体の火照りが冷めるに従い、気持ちも随分落ち着いてきた。
京一はもういつも通り、何気なく龍麻に絡んでは笑っているし、龍麻もさり気なく京一をあしらっている。
そうだ。二人きりの時ならともかく、公衆の面前で…それも風呂なんぞで、世界を構築されては敵わん。
行きの新幹線の車内アナウンスを思い出した。周りに迷惑をかけてしまっては、お前達がどんなに頑張っても、受け入れてもらえないんだぞ。

 俺は決意を固めた。
二人にハッキリと、互いの気持ちを確認しあうように告げよう。
そしてその上で、周囲に及ぼす影響の多大さを認識させ、なるべく穏便に社会に受け入れてもらえるよう、自らの行動に注意させるのだ。
善は急げだ。…善かどうか分からんが。
早速話をすべく、俺は二人にこの後どうするかと尋ねた。
しかし京一の言い出したことは、俺の予想を遙かに超えていた。
……お前、まさか…!!」
何故ここで、女風呂なぞ覗きに行かねばならんのだ。折角退きかけていた汗がまた吹き出てくる。
「どこが壮大な計画なんだ。下品な野望だろッ!!」
「ちぇッ、これだからカタブツはよォ。」
カタブツとかそういう問題じゃないッ!
俺を見限った京一は、今度は龍麻に声をかけだした。
 …もしや…これもまた、京一なりの気苦労なのだろうか。
「俺は女好きのスケベなんだ!」と宣言することで、自らの気持ちを封印し、龍麻への想いを忘れ、また龍麻にも疑われまいとしているのか。
 だが何故か、龍麻までその計画に乗ってしまったのだ。
俺はぎょっとした。
そして、一緒にぎょっとした京一の顔にも気付いた。やはり、京一は本気で龍麻を誘っていたのではないのだ。
 しかしそれを誤魔化すように、慌てて嬉しそうに龍麻の肩を叩くのを見て、また胃が痛むのを感じた。
…龍麻もまた、自らの想いに蓋をするため、女風呂を覗くなどという破廉恥な行為に走ろうとしているのだろうか。
「…俺は…どうなっても知らんからな。」
 何事か言い返して去っていく二人の背中を見送り、俺はグッタリとしながらロビーに向かった。

 何となく部屋に戻る気がせず、ぼんやりとソファに身体を預ける。
先ほどの決心が、跡形もなく消失しているのを感じた。
このままでは二人ともどんどん間違った方向へ進むのは目に見えている。もう、こんな犯罪じみた行為にまで及んでいるのだから。
 だが、俺には二人を止めることは出来なかった。
例え犯罪を犯しても、今は辛くとも、互いに互いを諦めることこそ、将来的には幸せなのではないか。その常識的な思いがどうしても頭から離れないのだ。
「…醍醐クン。珍しいのね、一人なの?」
ハッとして顔を上げると、マリア先生が立っていた。
「あ…は、はい。…少し、涼んでいました。」
「フフッ、良いお湯だったみたいネ。センセイも早く入りたいワ。」
先生は、俺の隣に座ると、すらりとした長い足を組みながら、改まって言った。
「…醍醐クン。何か、悩み事でもあるのかしら?」
「えッ!? …い、いえ…。」
「そう…? なら、いいけど。…何かあったら、いつでも相談してネ。一人で抱え込んではダメよ。」
「…有り難うございます。」
そんなに顔に出ているのだろうか。しかし、こればかりは先生に相談することは出来ない。
……醍醐クン。」
「は、はい。」
少し言葉を切ると、先生は続けた。
「…人は、一人では生きていけない動物でしょう。一人では弱くて、自分の弱さに負けてしまう生き物でしょう。だから、力を合わせる。大勢が集まると、恐ろしいほど強くなる…」
……。」
「醍醐クンは強い人だけれど、やっぱり一人きりでは、自分の弱さに負けてしまう時が来るワ。そのこと、忘れないように…ネ。」
「…はい…!」
 フフ、と笑ってマリア先生は去っていった。
どこか侮れない人だとは思っていたが、俺の悩みを見透かすような助言には頭の下がる思いだった。

「…うふふ〜。醍醐ク〜ン、一人なの〜?」
 うッ…裏密。
「ひ〜ちゃァんに〜、ロビーに来てねって言っといたのに〜。ひどい〜。」
いつもの不気味な笑みを湛えたままで、あまり傷ついているようには見えないが、裏密はどうやら龍麻と約束をしていたらしい。
「あ…その…た、龍麻は、京一に無理矢理連れて行かれたんだ。悪く思うな。」
何となく、後で龍麻が大変な目に遭うような気がしたので、つい言い訳してしまった。
………そう〜…京一ク〜ンが…」
しまった…これでは、京一にとばっちりが行くだろうか。
不味い事を言った、と思いつつ裏密の顔色を窺っていると、裏密はちょっといつもの笑顔を消して、じいっと俺を見つめた。…うう…一気に湯冷めしそうだ。
「…醍醐ク〜ン。あのあと〜、ミサちゃんも占ってみたの〜。同じことを何度も占っちゃいけないから〜、醍醐ク〜ンの運勢を〜、占ったの〜。」
「…何だって?」
「大丈夫よ〜。醍醐ク〜ンの気持ちは〜、きっと通じる〜。安心して〜。」
「う…裏密…お前…。」
いつものような、難解で背筋が寒くなるような予言ではなかった。
どうやら、俺が恋の悩みで苦しんでいると思い、同情してくれたらしい。
「…ひ〜ちゃァんには〜、折角のチャンスを失ったわね〜って言っておいて〜。うふふ〜。」
「あ、ああ。…その…有り難う。」
 …済まん、裏密。
俺はてっきり、俺達が怯えたり混乱したりするのを楽しむため、わざと恐ろしいことを並べているのだと思っていた。
だが、こんな風に気遣ってくれるところを見ると、いつものあれも、彼女の精一杯の気遣いなんだと理解出来た気がする。

 マリア先生と裏密の思いがけない思いやりで、気持ちが少し軽くなったようだ。
気持ちを落ち着けて、もう一度二人のことを考えてみた。
連中にとって一番良い道が解らないのは当然だ。連中だって悩んでいるのだから。
恋愛に疎い俺がどんなに知恵を絞っても、そうそう良い解決策が見つかる筈もないのだ。
だが、それでも俺は、あの二人のために何かをしてやりたかった。
マリア先生のように、例え何も出来なくとも「いつでも相談に乗る」と言ってやりたい。
裏密のように、根拠はなくとも「大丈夫だ」と励ましてやりたい。
 そうなのだ…。
俺は久々に心が晴れるのを感じた。
何はどうあれ、京一も龍麻も俺にとってはかけがえのない存在なのだから。
 あいつらを信じよう。成り行きに任せる、というと無責任なようだが、奴らの気の済むようにさせてやろう。
そして、何かあった時にはいつでも手を差し伸べよう。
今回のように、周囲に何か悪影響を及ぼすようなことがあったら、俺がフォローに回ってやればいい。
奴らなら、ちゃんと自ら正しい道を選び取れる筈だ。…俺は、そう信じる。

「はぁア……終わったな…。」
 その声に顔を上げると、力無く肩を落とした京一と、その背をポンポンと叩く龍麻が、こちらに向かって歩いてくるところだった。
どうやら失敗に終わったらしい。
声をかけようとして、俺は気付いた。
龍麻が微笑っている…。
本当に微かではあったが、いつも厳しく引き締められた表情ではなく、穏やかさを湛えて京一を見つめている。
 …そうか。そういうことだったのか。
いくら自分の心を誤魔化そうとしていると言っても、勤勉で清逸なあの龍麻が、どうして京一の悪巧みに乗ったのか腑に落ちなかったのだが、どうやら京一の邪魔をしてやったらしい。
 成る程、巧い手だ。
どうせ止めて聞くような男ではない。一人で行かせて悪事を働くのを傍観するより、一緒に行って悪事を阻止することを選んだというわけか。
京一を良く理解したその行動に、俺は心の底から感心した。
 そして安心した。
この二人ならきっと、上手くやっていける。
一人では、己の弱さに負けてしまう。だけど、二人なら…。
脱線しやすい京一を龍麻が抑え、内に悩みを抱え込みやすいらしい龍麻を京一が思いやり、互いに支えとなっていけるに違いない。
 いずれ二人には、それとなく互いの気持ちを伝えてやろうと改めて決意をし、俺は笑って言った。
「まあ、こっちへ来いよ。」
 話ならいくらでも聞いてやるからな。
お前達のより良い未来のためになら───

12/03/1999 Release.