小咄
之八

手違い


 (……あれ? 弦月いないな…。今日は中国の旧正月、きっと今年もまた何かやりに来ると思ってたんだけど。これから来るかな?
この日のために3ヶ月、王道のツッコミ「何でやねん。」(裏拳付き)を密かに練習してきたんだ。今年こそ絶対に弦のボケにツッコんでみせるぞ! オレは燃えてるぜー! メラメラ!)
「…だ〜れだッ?」
(ぎゃ!? いきなり目の前が真っ暗に…あ、目隠しか。弦? いや、この<<気>>は…)
「京一。」
「ヘヘヘッ、当ッたり〜。ひーたん、こんなトコで何やってんだ?」
「…いや…何も。(まだ)」
「ふぅん。じゃあ早く帰ろうぜ。俺、今夜はひーたん特製ラーメンが食いてェな〜。」
「…昼も…食ったろ。」
「あれは醤油ラーメンだったから、夜は味噌な味噌ッ。」
…………。」
「何だよォ、ヤなのか? ひーたんがイヤなら別にいいけどよ…でもひーたんのラーメン、絶品なんだもんなァ〜。今後一生ひーたんラーメンしか食えなくても、俺は幸せなんだけどなァ〜。」
「…解った。味噌ラーメンな。」
「ひゃ〜ッ、それでこそ俺のひーたん♪(抱きつき)じゃ、早く帰ろうぜ〜♪」
「…ああ。少し待っ」
「アンタらはどこのバカップルですかーッッッッ!!!」(バキッ)
「ぐはァッ!?」(ドタッ)
「…弦か。」
「ああもうッ、今年はとびっきりのネタ仕入れて新年のご挨拶に来たっちゅーのに! なーにが『ひぃたぁん』やッ気色悪ッ! アヒルの卵かっちゅーの!!」
「そりゃピータンだッ。てゆーかいきなり後ろから跳び蹴りするほどのこっちゃねェだろ!」
「するほどのことやないかい!(びし) それでなくともサーノはんが『表裏はギャグですよー主役二人はアヤシイけど何もあれへんよー』と言い張っても人様のリンク集には思っきし『京主』て書かれてナンギしたはるっちゅーのに、そんな新婚さんみたいな呼び方しないな!! ますますアヤシイやないけ!」
「べべ、別に俺達はそ、そ、そんな…」
「何でどもっとんねーん!(びし)」
「うるせェッ! どう言われてようとテメェに関係ねェだろッ、そっちこそアヤシイじゃねェか! 大体、お前の『あにきぃ〜(はぁと)』って呼び方こそ昔っから変だと思ってたんだよッ!」
「ななな、何やとー? ワイがアニキをアニキー言うてどこがオカシイねん! 逆ギレしてんとお客はんらに潔白を証明せー!」
「知るかー!!」

 (うえぇん。今年こそ弦と漫才が出来ると思ってたのに、京一ずるい〜。そんな見事にボケツッコミして、おうおう見せつけてくれるじゃねェかよお二人さん。…しくしく。
まァいいか、二人の絶妙なドツキ漫才が観られたし。くッそー、来年こそはー!)

 龍麻の熱い想いが京一と劉に伝わることはなかったが、二人が争っている元凶が自分なのだと龍麻が気付くことも、この先もずっとなかったのであった…。

◇ 完 ◇

2005/02/09 Release.