之壱

こいうた

 ふしぎなひと。

 そう、思った。

 遠くからでも「光」が視えた。

 つよい、<<力>>をもったひと。

 わざとぶつかって。名前をきいて。



 緋勇 龍麻、さん。

 兄さんに報告する。

 ふしぎな、ひと。



 <<力>>と<<力>>がぶつかっている。

 視えたから、たしかめてみた。

 あのひとだった。

 つよくて。はげしくて。

 …仲間を、かばって。

 ふしぎな。ひと…



 兄さんに言われて、見張っていた病院で、また会った。

 つよい光をもったひと。

 わたしを、見つめる。

 きれいな瞳。

 ふしぎな…ひと。



 使える、と兄さんが言った。

 人がつよくなるための研究。

 パパやママみたいに、死ななくてすむ研究。

 わたしと兄さんみたいに、辛い想いをしなくてすむ研究。

 あの、つよいひとを使う。

 それが、わたし達兄妹の望み。

 でも…。そうしたら。

 あのひとは、どうなるのかしら。



 また逢えた。

 わたしを、まっすぐ見つめる。

 何を見ているの。

 わたしのなかの、本当の、わたし?

 兄さんとはちがう瞳。

 わたしをまっすぐ見てくれる、ひと。



 無理に、お願いした、デート。

 ずっと、憧れていた。

 ふつうの女のこになって。はしゃいで。

 なにもかも忘れて。夢を見て。

 緋勇さん。

 見つめてくれる、ひと。

 あなたの見つめているわたしは、ふつうの、女の子。



 …だから。

 もういいんです。

 緋勇さん。ごめんなさい。

 あなたはきっと、わたしを覚えていてくれる。

 わたしにも、護ることができたから。

 パパとママが、わたしを護ったように。

 だから…

 ありがとう。



 ふしぎな、あなた。

06/08/1999 Release.