002. 謎の同級生 ...【散文的小咄

散文的小咄

 今回の≪転校生≫は変だった。
また転校生だってよー、今度の奴はまた行方不明にならないといいけどな、なんて話しながら待っていた3−Cの面々は、ヒナ先生の後ろからチョコチョコと入室してきた小動物を見た途端、心の中で
「小ッさッ!!!」
と叫んだ。
気の利いた奴は続けざまに
「おいおい、ここに中等部はありませんぜダンナ」
などとツッコミを入れた程だ。
それくらい≪転校生≫はミニマムサイズだった。
 それでも、キリッと表情を引き締めた(後から理解したところによると、彼は非常に緊張して顔が固まっていたらしい。その後は滅多に真面目な顔を見られる事がなくなった、とクラスの女子連は嘆いた)堂々とした立ち姿は、小さいなりになかなか格好良くも見えたのだが。
最初のご挨拶に、更に全員打ちのめされることとなった。
「皆様、お早うございます。私の名前は葉佩 九龍と申します。中途からの参加ではありますが、これから卒業まで、どうぞ仲良くして下さいますよう、切実にお願い申し上げます。」
ペコリン♪という擬音を立てつつお辞儀をした後の笑顔がまた、
「おいおい、ここに初等部はないのよボウヤ」
とツッコミを入れずにいられないほど愛らしい。
「何なの? このコ何?」
「マスコット? 3−Cのマスコットね?」
「持ち帰りてェ…。」
「お風呂に浮かべて遊べそう…。」
ひそひそと話し合う一同に、何を話してるんでしょうか〜と言いたげな笑顔が右、左と傾ぐ。
不安で胸がいっぱいなせいか、それとも肺を患ってるのか、懐にお守りを隠し持つPL学園出身者なのか、胸に手を当て、それでも笑顔を消さない。
「ああ…あれは@ン様?」
「ヨ@様のようだわ…。」
「九龍、だからクロ様ねッ。」
「クロ様素敵…v」
 このようにして、訳の分からない事由で≪転校生≫葉佩九龍はクラスメート達の心を一瞬にして掴んだ。
と同時に、互いに牽制し合い過ぎて誰一人全く声をかけられなかったため、周囲の空気を何一つ読まない女・八千穂が強引に外へ連れ出すまで、かなり孤独な時を過ごす羽目に陥ったのだった。

2004/11/30(火) Release.

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