008. うさぎ ...【百題的小咄

百題的小咄

「いいじゃねェか、困ってるクラスメートを助けてくれよ。なァ?」
「そうそう、友達だろー?」
「あ……あのッ……ほ、本当に僕……お金、持ってなくて……あの……
「じゃあ財布見せてみろよ。空っぽかどうか確かめてやるから。」
「あッ……! や、やめて下さ……!」
───何をしている?」
「げ……い、夷澤。」
「おい、やばいって。行こうぜ。」
「ああ……響ッ。明日は必ずな! 覚えておけよ!」
……。」
───教室からバタバタと数名の生徒退場───
「フン。またイビられてたのか。」
「あ……ありがとう、夷澤くん……。」
「別に助けた訳じゃないだろ。俺はただ≪生徒会≫役員として放課後の見廻りをしていて、教室に寄っただけなんだからよ。」
「で、でも、本当に助かったから……。」
「はッ。有り難がってる暇があったら少しは強く出て、ああいうアホどもを見返してやれってんだ。」
「そんな……僕は夷澤くんみたいに、強くないもの……。」
「あァあァ嫌だ嫌だ。てめェが苛められる理由はな、響。弱いからじゃなくて、弱い自分に酔ってるからだ。俺だって苛めたくなるぜ、下らねェからやらねェけどな。」
「よ……酔ってなんかないよ、ひどいや夷澤くん……。」
「だァーッ! 何が酔ってねェだよ、だったらその『ぶりっこポーズ』(死語)をやめろッ!」
───生徒手帳を取り出す夷澤───
「大体何だ、このフレーム! こんなのフツー女子供しか撮んねーだろ! こういうのが『いぢめてください』って態度じゃねーってんなら何だってんだ!?」
「うッ……だ、だって〜……。クラスの女の子たちが、これが一番似合うって言って、無理矢理……。」
「かーッ、何が『女の子たちが〜』だ。女どもの言うなりになってオモチャにされてよ、やっぱ喜んでんじゃねェか。」
「ち、違うよぅ……。僕だって本当は、嫌だったんだ。……でも、夷澤くんのフレームみたいなの、僕じゃやっぱり、似合わないんだもの……。」
「当たり前だ。そのフレームは俺のためにあるようなものだからな。フフン。」
「いいな、夷澤くんは……。強くて、自分に自信があって……。」
「だから当たり前だっつーの。憧れるんなら少しは俺に近づけるよう努力しろ。ま、俺ほどになるのは100年経っても無理だろうけどよ。」
「う、うん……。」
「手始めに、ここから寮まで全速力で走って帰れ。15分以内に着かなかったらお前を始末するぞ。」
「えぇッ!? む、無理だよ、そんなの……。」
「無理でも行け。それでなくても放課後の鐘はとっくに鳴ってんだ、走らねェなら今すぐにでも……。」
「ひ、ひいィ〜ッ!」

 ……ことほどさように性格の遠い二人が何故プリクラ交換をしていたのかは、≪学園九不思議≫に一つ足してもいいほど謎なのであった。

2004/12/30(木) Release.

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