010. 間に合わない ...【百題的小咄

百題的小咄

「た、隊長ドノッ、自分はもうダメでありマスッ。自分を置いて、隊長ドノは先に進んデ欲しいでありマスッ。」
「最後まで諦めてはいけません! 二人で一緒に頑張りましょう、墨木サン!」
「自分には不可能でありマスッ。隊長ドノの足についていくことは最早困難ッ。どうか隊長ドノ、お一人で行って欲しいでアリマス!」
「いけませんッ。どうしてもと仰るなら、私もここに残ります。二人で討ち死に致しましょう。」
「それは良くないでありマスッ。隊長ドノさえご無事に目的地へ達するならバ、自分はこの地ニテ討ち死にするも本望ッ。自分を犠牲にシテでも、隊長ドノは……
───ッ!! 馬鹿なことを仰らないで下さい!! 私は絶対に嫌です! そんなことをしなければならないのなら、隊長などと呼ばれたくございませんッ。墨木サンが昇格でございます。さあ墨木隊長ドノ、私をお連れ下さい。たとえ間に合わなくとも、どこまでもご一緒致します! でアリマス!」
「た……隊長ドノ……! 自分は……、自分は感動シタでありマスッ! 何という広い度量をお持ちカッ! やはり貴殿ハッ自分が見込んだ通りの隊長ドノでありマスッ! これからモ自分を導いて欲しいでありマスッ!!」
「墨木サン……。了解でアリマスッ。それでは最後まで諦めず、一緒に頑張りましょう! 目的地まで全速前進でアリマスー!」
「はッ! 隊長ドノー!」
 始業の鐘まであと5分。
「どう足掻いたってこの寮からは到底間に合わないだろうが。」とツッコむか、それとも「朝っぱらから暑苦しいコントやらかして、俺の安眠を妨げるんじゃねェ!」と怒鳴ろうか。
寝起きのボーっとした頭で迷いつつ遠くから一部始終を眺めていた皆守は、二人が結局猛ダッシュで走り去ったので、頭を掻きながら自室に戻り、もう一度寝直したのだった。

2005/02/24(木) Release.

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